平成21年度 秋学期入学式を挙行(2009/10/2)

イベント報告 2009/10/07

 10月2日(金)、先端科学技術研究調査センター1階研修ホールにおいて平成21年度 秋学期入学式を挙行しました。
 本学では、国内外を問わず、また出身大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力をもった学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の研究分野に対する強い興味と意欲をもった者の入学を積極的に進めており、このたび、32名の新入生を新たに本学に迎えました。
 海外からの留学生も多数含まれていたため、当日は磯貝学長から日本語及び英語での式辞が述べられ、新入生たちは緊張した面持ちで聞き入っていました。

【入学者数】
(博士前期課程)
  情報科学研究科 9名(うち外国人留学生 3名)
  計 9名
(博士後期課程)
  情報科学研究科 12名(うち外国人留学生 4名)
  バイオサイエンス研究科 6名(うち外国人留学生 5名)
  物質創成科学研究科 5名(うち外国人留学生 1名)
  計 23名

総計 32名(うち外国人留学生 13名)

【磯貝学長の式辞】 
 本日、奈良先端科学技術大学院大学に入学されました32名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本学の教職員や学生を代表して、心からお喜びを申し上げます。また、本日の新入学生の中には、13名の海外からの学生諸君が含まれています。母国を離れて、この日本で学生生活を送ることを決意された皆さんにも、深く敬意を表したいと思います。
 最初に皆さんがこれから生活しようと考えているこの大学の歴史を紹介したいと思います。
 本学は、これからの時代を担う、あたらし科学技術の研究教育は、新しいシステムのなかで行うべきであるという方針の元に、1991年、98番目の国立大学として設立されました。その際、もっとも重要な特徴として考えられたのが、大学院大学という制度です。それまで、日本の大学院制度は、全て、学部の上に作られ、学部と一体化された運営をされておりました。大学院大学というシステムは、こうした、硬直化した大学院制度に風穴をあけるために工夫されたシステムなのです。この制度によって初めて、広範な学問的背景を持った、すなわち、たとえば、理学、工学、医学、農学などの学部を横断して包含するような、研究科が出来上がりました。本学にまず作られたのが、情報科学研究科とバイオサイエンス研究科で、その後、3番目の研究科として、物質創成科学研究科が作られました。この3つの研究科は、日本政府がこれからの科学技術政策の中心として設定した、IT,バイオ、ナノテク、環境という4つの分野の内の3つを基盤とするもので、いかに、本学に期待されるものが大きかったかがこれからもうかがえます。
 その後、18年間の多くの教員や、職員達の努力によって、また、本学に入学してきた学生諸君のがんばりによって、本学は、日本の中で、研究教育の面でもっとも優れた大学院の一つとして、社会に認知されてきました。それらについては、皆さんも、本学案内の中で、見てきたことと思います。そのなかで、特に優れているのは、研究力であると私は思っております。このことは大学院大学として大変重要なことで、私達は、優れた教育システムの構築には、優れた研究力が無ければならないと思っています。また、教育力についても、本学は大学院における、高い研究力を背景にした教育システムのモデルを作るべく努力をしてきました。そのシステムも今高く評価されているところです。このような教育研究活動によって、本学はこれまでに、先月末の卒業生を加えて、博士前期課程の修了生4542名、後期課程850名の修了生を世の中に送り出してきました。皆さんの先輩達は、日本のみならず世界の各地で、研究者として、また、研究技術者として、活躍されています。彼らが、今、本学の歴史と、伝統を作っているといってもいいのだと思います。皆さんは、こうした本学の研究教育力にきっと満足されることであろうと思っています。しかし、皆さんは、ただ教育を受けるという立場のお客さんではありません。
 大学は、教員、職員及び、学生から成り立っています。皆さん自身が、本学の重要な構成員として、これからこの大学の歴史を作っていくのだという心構えを持ってください。そのためには、皆さん自身が、自立的に学修していく必要があります。皆さんが本学で学ぶにあたって、まず、科学者として、科学の作法を学んでほしいと思います。作法という言葉には、単に、書かれた知識だけでなく、考え方や理念、身体で覚えることや、文字にかけない当然の決まり事、また、身の処し方、生き方などの科学者としての倫理なども含まれます。科学の作法とは科学の文化そのものなのです。こうして自ら学ぶこと、その結果として何かを知ることによって、知らないときとは同じではない自分になる。それが知るということの本質であります。
 皆さんは、科学者として活躍できる将来の自分づくりを目指して本学にこられました。そのためには、まず、自らの専門分野についての専門家になる必要があります。しかし、同時に、その専門を活かすためには、また、将来科学者として、様々な分野で活躍するためには、科学的な知識だけではなく、人間としての幅広い、文化的な素養が必要です。その目的のためにも皆さんの時間を使って欲しいと思います。たとえば、芸術や工芸といったものが、独創性、創造力という意味では、科学や、科学技術に極めて近いものだというがきっと理解されるでしょう。また、文系の学術における総合化という概念の重要性を理解されるでしょう。
 私達の大学があるこの地区を関西文化学術研究都市(通称けいはんな学研都市)と呼びますが、その文化という言葉の一部は、奈良という都市に由来するものです。皆さんには、この京阪奈という地域がどんなところかを見学する機会を作ってありますが、奈良という地域についても、どうか、積極的に知って欲しいと思っています。皆さんの文化的素養を身につけるのに、ふさわしい多くの文化的遺産が、現代に生きています。興福寺の阿修羅の展示会に、東京では100万人、福岡では70万人の人が集まったということです。そのほかにも、唐招提寺の金堂は、10年にわたる修復を経て、この秋から再び見ることができます。また、毎年10月末からは正倉院展が開かれ、多くの人たちが、全国から訪れます。皆さんは、幸運にも、この地にいて、これらを簡単に見ることができるのです。奈良の多くの文化遺産は、文化とは何かを、私達に教えてくれるはずです。
 奈良は2010年、つまり、来年、遷都1300年を迎えます。奈良は、シルクロードの終着点であり、多くの西洋や西アジアの文化が、人と共に、大陸を経由して入ってきました。当時の奈良は、世界最先端の国際的学術文化都市でありました。
 この、かつての奈良がそうであった、国際的というキーワードが、本学におけるもうひとつのこれからの課題です。
 これからの世界は、世界が協調して、地球規模の問題の解決にあたる必要があります。その意味で、科学技術の分野は、世界標準、あるいは、グローバル化が重要であります。本学も、日本の中での著名な大学院にとどまることなく、世界の中で評価される大学院を目指しております。そのためには海外からの留学生をもっと増やしていきたと考えております。それは、本学のグローバル化の一つの道筋であります。それによって、本学が世界、特にアジア地区の科学技術の研究教育に貢献すると同時に、本学で学ぶ日本の学生の国際的感覚を高めたいと思っています。その経験は、日本の学生が将来国際的に活躍する際にきっと役立つはずです。また、海外からの学生諸君には、日本で学ぶことの意味を考えて欲しいと思っています。この国で、単に科学技術を学ぶことだけではなく、日本を知り、日本について学んで欲しいと思います。それは、皆さんに将来に役立つことであると考えます。
 皆さんの本学における学生生活が稔り豊かなものであることを祈って、また、皆さんが将来、世界の舞台で大いに活躍されることを期待して、式辞と致します。入学おめでとうございます。



 Now I will talk in English a summary of my address for the foreign students.
First of all, on behalf of all the staffs and students of NAIST, Nara Institute of Science and Technology, I would like to express my hearty congratulation and welcome to you new students. Among 32 new students, 13 are from abroad. I would like to appreciate especially the decision of foreign students to leave your home countries and to come to Japan for your future.
NAIST was settled in 1991 as 98th national university in Japan. NAIST is composed solely of graduate schools concerning information sciences, biological sciences and material sciences. These three fields are very important in sciences in 21st centuries. NAIST aims to establish a new model system for research and education systems in graduate courses in Japan. Although the history of NAIST is very short, only 18 years, NAIST already has a high reputation, thanks to our achievement in research and education activities.
I am sure that a university is composed of teachers, office staffs and students. There are many excellent teachers in this university and you may be satisfied with them. But, you should not be passive persons just to be taught by teachers, but you should study for yourselves and by yourselves. I hope that you would master especially the manner of science. The word, the manner of science, means not only knowledge of sciences written in books but also ethics or moral necessary to scientists including styles of thinking and social responsibility. The manner of science is really the culture of science.
In addition to scientific activities, I hope you would be interested in Japanese language and Japanese culture. You have decided to study in Japan for your future lives. To realize your dreams and to make your stay in Japan much more meaningful, it is very important to know culture of Japan.
You are now in Nara. 1300 yeas ago, Nara became the first capital of Japan, and thus the political and economic center. Moreover Nara was the eastern terminus of the Silk Road, through which various types of western culture were introduced to Japan together with many specialists in science, technology and art. That is, already 1300 years ago Nara was an international city in the world and the center of culture and sciences of Japan. In the next year, 2010, Nara prefecture and Nara city will celebrates the 1300th anniversary of its becoming the first capital of Japan. Please visit Nara and enjoy the historical sites, national treasures and atmosphere of the old city. To know Nara is to know Japanese culture.
It is our wish that NAIST will become an international center, like the old Nara city, and become one of the top universities in the world for the excellence in research and education. To accomplish it, the contribution and collaboration of all of you are essential. I believe that you younger generation will establish the history and tradition of NAIST and also contribute to lead to a sustainable world in the near future.
Congratulations.



 平成21年10月2日

 奈良先端科学技術大学院大学 学長 磯貝 彰

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