平成25年度学位記授与式を挙行(2013/12/20)

イベント報告 2013/12/25

12月20日(金)、事務局棟2階大会議室において学位記授与式を挙行しました。
小笠原直毅学長から、出席した7名の修了生一人ひとりに学位記を手渡し、門出を祝して、式辞を述べました。

式終了後には記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合いました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科2名
バイオサイエンス研究科6名
物質創成科学研究科1名

計9名

【小笠原学長式辞】
本日、博士の学位を授与された、9名の皆さん、おめでとうございます。その中には、本日欠席された方を含めて、5名の留学生の方がいらっしゃいます。本学修了生の国際的なネットワークが広がって行くことをうれしく思います。

さ て、最近、我国では科学技術の将来について、色々な声が上がっています。生産年齢人口が大きく減少する少子高齢化社会を目の前にして、我国の活力を維持・ 向上させていくためには、そうした社会に対応するための新たな科学技術の創出が必要です。人、物、情報等が国境を越えて流動化し、また、アジアやアフリカ 諸国の経済発展が目覚ましい世界の中で、我国の立ち位置を確保していくためには、従来のビジネスモデルから脱却し、グローバルな視点で革新的なイノベー ションを創出することも必要となります。より広い視野で見れば、地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化等の環境破壊の問題と世界での人類の活動を両立 させるためには、便利さ・豊かさを求める、今までの先進国の経済発展モデルが通用するのかという問題が提起されています。そのための、グローバル化した社 会を舞台にした新しい経済発展モデル、社会モデルが必要です。皆さんは、アカデミアという場であれ、産業界でという場であれ、こうした新たな科学技術の開 拓の第一線に立とうとしているわけです。

一方で、科学技術自身も大きく変貌しつつあります。情報科学分野の今年の新しいキーワードは、 ビッグデータでした。コンピューター、センサー、ネットワークの性能が高度化し、全世界がインターネットでリアルタイムに繋がれ、世界の様々なデータを一 体的に活用することが可能な時代になりました。その結果、ICT技術が支える新しい世界が作られることが期待されています。その対象は、エネルギー、交 通、福祉や農業にいたるまで、多様なものが想定されています。また、色々な問題をはらんでいますが、ヒト個人の30億塩基のゲノム配列を決定し、ヒトの 様々な性質を推定するビジネスが現実のことになったことが、最近、話題になりました。すなわち、配列解析技術の革新により、我々個人のゲノムを含め、様々 な生物のゲノム配列を簡単に決められる時代になり、自然界の生物の多様性の根源を研究できるようになりました。また、ビッグデータバイオロジーという言葉 に象徴されるように、膨大なデータの統計学的解析が実験生物学を先導するようになるパラダイムシフトが起こりつつあります。こうした変化は、10年前には リアリティを持って考えられなかったことであり、今後の科学技術の展開は、私たちの現在のイメージを超えたものになると思います。

皆さん には、今後、奈良先端大の修了生として、こうした新しい科学技術の創造に、主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。最近、イノベーションを生む ためには、何が必要か、多くの本が出版されています。その根本は、(Steve)Jobs氏の"Think Different"という言葉に端的に示されているように、creativeな発想です。それを生むためには、日頃、様々な事象を常識にとらわれず注意 深く観察すること、異なるバックグラウンドを持つ人々と積極的に対話し、異分野からの視点・情報を得ること、様々な試みをしてみることが重要であることな どが指摘されています。身近な言い方をすると、自分の専門に閉じこもることなく、また、従来の考え方にとらわれることなく、科学技術の変化や社会の変化に 常に目を配り、創造的な発想を追究し、その上で、異分野の研究者とも連携して、新しい未踏の分野を創造的に開拓していくことが重要です。実際、そうした博 士人材を求める声が、我が国の様々なところから聞こえてきています。そうした、創造的で主体的な生活を目指していただきたいと思います。私たち教職員は、 今後も皆さんの常に最先端を目指す研究を支援して行きたいと思います。

最後に付け加えたいのですが、新しい原理の発見や新しい技術の開拓 などの基礎的な分野で活躍される方、社会問題の解決により近い現場で活躍されようとしている方、今後の舞台は色々と思い、ます。しかし、基礎的な研究の成 果とその社会的展開の距離がどんどん近くなっていることも、現在の科学技術の特徴の一つであり、両者は新しい社会の形成への科学技術の貢献のための両輪で す。その意味で、基礎研究を指向する方もその社会展開という視点もきちんと持ち、また、様々な課題解決のための技術開発、応用的研究を指向する方も、基礎 科学技術の新たな展開に注目し続けていただきたいと思います。

皆さん、おめでとうございます。今後の活躍を期待しています。

平成25年12月20日 奈良先端科学技術大学院大学長 小笠原直毅

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