平成25年度学位記授与式を挙行(2014/03/24)

イベント報告 2014/03/26

3月24日(月)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う392名の修了者を送り出しました。

授与式では、小笠原直毅学長から学位記が手渡され、式辞が述べられた後、小山博之本学支援財団専務理事から祝辞が述べられました。

また、本学支援財団が優秀な学生を表彰するNAIST最優秀学生賞の表彰を行い、14名の受賞者に同支援財団から賞状及び賞金が贈られました。

式終了後には祝賀会・記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合っていました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】
情報科学研究科 130名(うち短期修了6名、留学生16名)
バイオサイエンス研究科 115名
物質創成科学研究科 98名(うち留学生4名)
計 343名(うち短期修了6名、留学生20名)

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科 20名(うち短期修了3名、留学生4名)
バイオサイエンス研究科 9名(うち留学生1名)
物質創成科学研究科 18名(うち短期修了3名、留学生2名)
計 47名(うち短期修了6名、留学生7名)

【論文提出による博士学位取得者】
情報科学研究科 2名

総計 392名(うち短期修了12名、留学生27名)


【学長式辞】

本 日、修士の学位を授与された343名の皆さん、博士の学位を授与された49名の皆さん、おめでとうございます。皆さんを含めて、奈良先端大の前期課程の修 了者は6,249名となり、6,000名を超えました。後期課程の修了者も1,225名となりました。また、今日、修士・博士の学位を授与された方々の中 には、世界13カ国からの27名の留学生の方がいらっしゃいます。本学修了生のネットワークが、日本だけでなく、世界に広がっていくことをうれしく思いま す。
 
また、修了生のご家族の皆さんにもお祝いを申し上げるとともに、修了生の学生生活をご支援いただいたことを、本学を代表して感謝いたします。さらに、留学生の方々の勉学・生活にご支援をいただいた、個人・団体の皆様にも感謝の意を表したいと思います。

さ て、前期課程を修了された方の中には、後期課程に進学し、さらなる研鑽を目指す方もいらっしゃいますが、多くの方は、修士・博士の学位を持つ研究者、技術 者、あるいは専門的職業人として、産業界あるいはアカデミアで、自立した新しい生活がこれから始まります。今、世界は、予測困難な時代、踏襲すべきモデル や先例がない時代となっていることが多くの人から指摘されています。同時に、科学技術の新しい展開により、新しい世界を築く可能性が広がっていることも指 摘しておかなければなりません。

今、全世界がインターネットでリアルタイムに繋がれ、情報、人、物が国境を越えて流動化し、そうしたフ ラットな世界の中でアジアやアフリカ諸国の経済発展が進んでいます。その結果、原子力発電にどう向き合っていくかということを含めて、エネルギーをどう確 保していくのか、また、現在70億人といわれる世界の人口が、2050年には90億人になると予想され、食料をどう確保していくか等、地球の資源の制約、 地球温暖化等の環境破壊の問題と世界での人類の活動を両立させるためには、便利さ・豊かさを求める今までの先進国の経済発展モデルが通用するのかという問 題が提起されています。日本においては、そうしたグローバルな問題に加えて、世界に類をみない、生産年齢人口が大きく減少する少子高齢化社会を目の前にし て、我が国の活力を維持・向上させていくために、従来のビジネスモデルから脱却し、グローバルな視点で革新的なイノベーションを創出することが必要となっ ています。そして、そのためには、新たな解決すべき問題を発見し、問題解決への創造的な回答を導く、異分野の研究者・技術者間の連携が求められています。 皆さんは、こうした新たな科学技術の開拓と普及の第一線に立とうとしているわけです。

一方で、科学技術自身も大きく変貌しつつあり、面白 い時代を迎えています。21世紀の科学はあらゆる分野で複雑系と向き合うものになると指摘されています。情報科学分野の新しいキーワードは、ビッグデータ です。コンピューター、センサー、ネットワークの性能が高度化し、全世界がインターネットでリアルタイムに繋がれ、世界の様々なデータを一体的に活用する ことが可能な時代になりました。その結果、ICT技術が支える新しい世界が作られることが期待されています。その対象は、エネルギー、交通、福祉や農業に いたるまで、多様なものが想定されています。また、色々な問題をはらんでいますが、ヒト個人の30億塩基のゲノム配列を決定し、ヒトの様々な性質を推定す るビジネスが現実のことになったことが、最近、話題になりました。すなわち、配列解析技術の革新により、我々個人のゲノムを含め、様々な生物のゲノム配列 を簡単に決められる時代になり、自然界の生物の多様性の根源を研究できるようになりました。そして、バイオサイエンスは、個々のプロセスを理解する時代か ら、それらがどのように統合されて多様な生物が生きているのか、そして、地球環境上で、様々な生物がどのように相互作用しているかを理解する時代になって います。ビッグデータバイオロジーという言葉に象徴されるように、膨大なデータの統計学的解析が実験生物学を先導するようになるパラダイムシフトも起こり つつあります。こうした変化は、10年前にはリアリティを持って考えられなかったことであり、今後の科学技術の展開は、私たちの現在のイメージを超えたも のになると思います。例えば、人の脳活動の全貌の解明を目指す10年計画の研究プロジェクトが欧米で始まっています。その結果、どのようなことが明らかに なり、それが私たちの生活にどのようなインパクトを与えるのか、想像以上のものになると思います。

皆さんには、今後、奈良先端大の修了生 として、こうした新しい科学技術の創造と活用に主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。そのためには、Steve Jobs氏の"Think different"という言葉に端的に示されているように、クリエイティブな発想が必要です。それを生むためには、日頃、様々な事象を常識にとらわれず 注意深く観察すること、異なるバックグラウンドを持つ人々と積極的に対話し、異分野からの視点・情報を得ることが重要です。身近な言い方をすると、自分の 専門に閉じこもることなく、また、従来の考え方にとらわれることなく、科学技術の変化や社会の変化に常に目を配り、創造的な発想を追究し、その上で、異分 野の人たちとも連携して、新しい分野を創造的に開拓していくことが重要です。具体的な例として、最近発表された、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事 業での、平成26年度の戦略目標を紹介したいと思います。そこでは、「社会における支配原理・法則が明確でない諸現象を数学的に記述・解明するモデルの構 築」、「人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理技術の開発」、「生体制御の機能解明に資する統合1細胞解析基盤技術の創出」、「二次元機能性原 子・分子薄膜による革新的部素材・デバイスの創製と応用展開」の4テーマが取り上げられています。詳しく話す時間はありませんが、全てのテーマで異分野の 研究者・技術者の連携が求められています。

さらに、基礎的な研究の成果とその社会的展開の距離がどんどん近くなっていることも、現在の科 学技術の特徴の一つであり、両者は新しい社会の形成への科学技術の貢献のための両輪です。その意味で、基礎研究を指向する方もその社会展開という視点もき ちんと持ち、また、様々な課題解決のための技術開発は、その活用、普及を指向する方も、基礎科学技術の新たな展開に注目し続けていただきたいと思います。

こ うした、皆さんの今後のクリエイティブな生活に、奈良先端大で学んだこと、経験したこと、そして奈良先端大で築いた人的ネットワークが役立つであろうとい うことに私は確信を持っています。さらに、奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、変化していく科学技術・社会の中で、皆 さんが持続的にクリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築していくことも奈良先端大の重要な役割であると教職員 は考え始めています。その仕組みの具体化は今後の課題ですが、私たち教職員は、今後も、皆さんの常に最先端を目指す生活を支援して行きたいと思います。

皆さん、おめでとうございます。今後の活躍を期待しています。

平成26年3月24日 奈良先端科学技術大学院大学長 小笠原直毅

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