研究成果 2014/04/17
すべての生物は、細胞膜で囲まれた細胞を生命の基本単位としており、細胞膜の働きについて理解を深めることは、 バクテリアから人まで共通した基本的な生命現象を理解する上では、欠かせません。細胞膜には、タンパク質を細胞膜に組み込む働きを担っている「膜組み込み タンパク質YidC」が存在し、このタンパク質は生命の維持に不可欠な因子です。しかし、これまでの研究においてYidCの立体構造は決定されておらず、 YidCによってタンパク質が細胞膜に組み込まれる分子メカニズムは謎でした。
東京大学大学院理学系研究科の濡木 理 教授、石谷 隆一郎 准教授、熊崎 薫 博士課程大学院生、京都産業大学総合生命科学部 千葉 志信 准教授、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 塚崎 智也 准教授を中心とした研究グループは、世界で初めてYidCの立体構造を決定しました。そして、この詳細な構造情報に基づき研究を進めた結果、YidCは、 疎水的な(水と混ざりにくい)生体膜に親水的な(水と混ざりやすい)凹みを形成するという、予想外のユニークな構造体を形成することを発見しました。さら に、細胞膜へと組み込まれるタンパク質がYidCの親水的な溝に結合することを確かめ、YidCによってタンパク質が細胞膜に組み込まれる分子メカニズム の新しいモデルを提唱しました。
本研究は、バクテリアから人まで共通した基本的な生命現象の一つを解明し、生命科学分野の研究の発展に大 きく貢献するとともに、YidCが細菌の生育に必須なタンパク質であることから、病原菌のYidCを標的とする新規の抗生物質などの薬剤開発の基盤となる ことが期待されます。
この成果は、英国科学誌ネイチャー電子版に4月17日午前2時(日本時間)付けで公開されました。