平成26年度秋学期入学式を挙行(2014/10/02)

イベント報告 2014/10/03

10月2日(木)、先端科学技術研究推進センター1階研修ホールにおいて平成26年度秋学期入学式を挙行しました。

本 学では、国内外を問わず、また出身大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力をもった学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な 目標と志、各々の研究分野に対する強い興味と意欲をもった者の入学を積極的に進めており、このたび、46名の新入生を本学に迎えました。

【入学者数】
(博士前期課程)
  情報科学研究科 11名(うち外国人留学生 8名)
  バイオサイエンス研究科 6名(うち外国人留学生 6名)
  計 17名
(博士後期課程)
  情報科学研究科 16名(うち外国人留学生 12名)
  バイオサイエンス研究科 9名(うち外国人留学生 9名)
  物質創成科学研究科 4名(うち外国人留学生 0名)
  計 29名

総計 46名(うち外国人留学生 35名) 


【小笠原学長式辞】

本日、奈良先端科学技術大学院大学の博士前期課程に入学された17名の皆さん、また、博士後期課程に入学・進学された29名の皆さん、本学200名の教員、150名の職員を代表して歓迎致します。

今 日の新入生の皆さんの中には、世界13カ国からの35名の学生諸君が含まれています。母国を離れて、この日本で学ぶことを決意された皆さんを、心から歓迎 したいと思います。これにより、本学に在籍する留学生は、世界41ヵ国、地域からの169名となり、全学生数1035名の16.3%となりました。私の目 標は、本学の約60の研究室の全てに、複数の留学生が所属するグローバルな教育研究環境を作る事ですが、これが現実に近づいていると感じています。

今 まで、我国の大学はともすれば視野が国内に限られていましたが、現在、世界の方々を受け入れ、日本の科学技術と社会を知ってもらい、また、日本人学生も世 界における科学技術への要請と世界各国の社会を知ることができるように、大学のグローバル化を進めることが求められています。そのため、文部科学省では、 今年度から、我国の大学の国際化を牽引する大学を積極的に支援するスーパーグローバル大学創成支援を開始しますが、本学もその支援対象に選ばれました。こ の経費を活用して、皆さんが生活しやすい支援体制を一層強化し、また、多様な文化・科学技術への要請を持っている国からの留学生が在籍しているという、本 学学生の多様性を活かすために、教育においても、交流の機会を積極的に提供していきたいと考えています。留学生の皆さんは、日本人学生はもちろんの事、 様々な国からの学生さんと、日常的にも交流を進めていただきたいと思います。

ここで、本学が設立された経緯を話しておきたいと思います。 奈良先端大は、新構想の独立大学院大学として、1991年10月に設立されました。本学の設立にあたって取りまとめられた新大学の構想には、本学の研究と 教育の使命について、以下のように書かれています。「先端科学技術分野は、広範な学際的広がりを持つこと、基礎研究における全く新たな展開が見られるこ と、しかもその展開が極めて急速であること、基礎研究における新しい知見が、極めて短期間のうちに技術開発につながっており、また技術の進歩が、これらの 基礎研究の基盤としてその進展を可能にしているなど、いわゆる科学と技術との一体化が、他の分野以上に顕著であること、等の共通の特色を持っている。した がって、これらの分野においては、従来の学問分野の枠を越えて、学際的な基礎研究の推進が極めて重要である。」教育に関しては、以下のように書かれていま す。「先端科学技術分野の急速な進展に伴い、これらの分野の研究開発を担う研究者、技術者の組織的養成が、学術研究面でも産業経済面でも大きな課題となっ ている。特に、これらの分野においては、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度の基礎力を持つ多様な人材を養成す ることが必要である。」

すなわち、本学は、急速に発展している情報・バイオ・物質という先端科学技術分野において、工学・理学・農学・医 学等の従来の学問分野の枠を越えた学際的な、そして科学と技術が一体化した研究活動を展開し、それを背景に、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分 野を開拓し続けることのできる人材を育成するために設立されたのです。こうした本学の研究教育のミッションは、世界を視野に入れというキーワードが付け加 わっていますが、現在、強く社会から求められているものであり、先駆的なものでした。

そして、活発な研究活動を展開していた、多様な背景 を持つ気鋭の研究者が結集し、高度の研究活動とそれを背景にした組織的な大学院教育により、6,257名の修士課程修了者、1,239名の博士課程修了者 を送り出してきました。こうした本学の研究教育活動については、客観的な数値指標でも、また、文部科学省による国立大学の教育研究実績の評価においても、 極めて高く評価されています。昨年、文部科学省は、大学の研究力強化・グローバル化を進めるため、研究大学強化促進事業として全国で22機関を選抜しまし たが、奈良先端大もその一つに選ばれています。

こうした本学の教育研究のミッションとの関係で、現在の科学技術は大きく変貌しつつありま す。21世紀の科学はあらゆる分野で複雑系と向き合うものになると指摘されています。情報科学分野の新しいキーワードは、ビッグデータです。コンピュー ター、センサー、ネットワークの性能が高度化し、全世界がインターネットでリアルタイムに繋がれ、世界の様々なデータを一体的に活用することが可能な時代 になりました。その結果、ICT技術が支える新しい世界が作られることが期待されています。その対象は、エネルギー、交通、福祉、農業など、多様なものが 想定されています。また、ゲノムDNAの塩基配列解析技術の革新により、ヒトを含めた多様な生物の様々な細胞活動、生物活動について、膨大な情報を得るこ とが可能な時代になりました。その結果、バイオサイエンスは、個々のプロセスを理解する時代から、それらがどのように統合されて多様な生物が生きているの か、そして、地球環境上で、様々な生物がどのように相互作用しているかを理解する時代になっています。ビッグデータバイオロジーという言葉に象徴されるよ うに、膨大なデータの統計学的解析が実験生物学を先導するようになるパラダイムシフトも起こりつつあります。物質の分野でも、分析・計測技術の高度化によ り、新しい物質世界の姿が見えるようになり、原子・分子の挙動の解明に基づき、20年前には考えられなかった新しい物質の創成が可能になっています。

さ らに、こうした科学技術の発展は、情報とバイオの融合領域である情報生命科学の誕生に代表されるように、情報・バイオ・物質をまたぐような、新しい学際的 科学技術分野を生みだしつつあります。また、基礎研究とその社会的な展開の間の距離も、本学が創設された20年前よりずっと近くなっています。皆さんが本 学を修了し、研究者、技術者などとして社会を担う10年、20年先には、科学技術がどのように発展し、それが社会にどのようなインパクトを与えているか、 現在の我々の想像を超える物になっていると私は思います。

 一方で、地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化などの問題と人類の活動を 両立させ、人類社会の持続的な発展を実現するための取組の重要性がますます鮮明になっていることも忘れてはなりません。そのためには、大量生産・大量消費 により物質的な豊かさを追及してきた今までの社会発展モデルの変革が必要であり、その意味で、踏襲すべきモデルや先例がない時代となっており、新たな解決 すべき問題を発見し、それへの創造的な回答を導く、異分野の研究者・技術者間の連携が求められていることが指摘されています。

皆さんに は、将来、世界の様々な場で、新しい科学技術の開拓・活用により、新しい世界を築いて行くために、急速な科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を 開拓し続けることのできる高度の専門性と幅広い視野、さらに、異分野、異文化の人々とのコミュニケーション力、恊働力を本学で養っていただきたいと思いま す。そのためには、自分の専門分野に閉じこもることなく、常に様々な研究の動向に目を配り、それを創造的に活用する能力を身につけることが重要です。これ から皆さんは色々な研究室に所属して、学修と研究活動を進めていくわけですが、他研究室や他研究科の考え方や手法をとりこむことにより面白い展開が可能に なるかもしれません。本学は、研究室・研究科の壁が低いことが大きな特徴です。皆さんも、様々な人との交流を是非進めてください。

最後 に、皆さんには、心身共に健康で楽しい学生生活を送って欲しいと思っています。本学で新たな生活を始めるにあたって、皆さんは新たに多くの人と知りあいに なるはずです。そして、そうした出会いを意味あるものとして継続し、絆というネットワークに広げていくことは、皆さんの学修・研究活動の幅を広げるだけで なく、皆さんの心の健康を支え、さらに、これからの人生を支える一生の財産になるはずです。

皆さんの意義ある学生生活とその未来に期待して、式辞とします。入学おめでとうございます。我々教職員は皆さんを心から歓迎します。

平成26年10月2日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 小笠原 直毅

NEWS & TOPICS一覧に戻る