イベント報告 2015/09/30
9月25日(金)、学際融合領域研究棟2号館1階 研修ホールにおいて学位記授与式を挙行しました。小笠原直毅学長が、出席した30名の修了生一人ひとりに学位記を手渡し、門出を祝して、式辞を述べました。
式終了後には記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合いました。
※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。
【博士前期課程修了者】
情報科学研究科 9名
【博士後期課程修了者】
情報科学研究科 10名
バイオサイエンス研究科 7名
物質創成科学研究科 5名
計 22名
【論文提出による博士学位取得者】
博士(バイオサイエンス) 1名
総計 32名
【学長式辞】
本日、修士の学位を授与された9名の皆さん、博士の学位を授与された23名の皆さん、おめでとうございます。
今日、修士・博士の学位を授与された方々の中で、留学生の方々が世界8カ国からの19名にも上ります。これで、本学で学位を取得された留学生の方々は、54カ国364名となり、本学修了生のネットワークが、世界に広がって行くことをうれしく思います。
2週間前、本学修了生の集まりに出席するために、インドネシアに行ってきました。インドネシアでは、既に30名以上の修了生の方が様々な大学で教育・研究 に活躍しています。その中の2人は、インドネシアのトップ100科学者に選ばれたそうです。また、ガジャマダ大学、ボゴール農科大学、インドネシア大学等 で、大学としての新しい研究プロジェクトの立ち上げの中心メンバーになっています。こうしたインドネシアで活躍する修了生を中心に、本学との関係者が30 名以上集まり、お互いに情報交換をするとともに、彼らの教育・研究活動に、奈良先端大はどのように協力できるのか議論するという、非常に楽しい時間を持つ ことができました。
奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、変化して行く科学技術・社会の中で、皆さん が持続的にクリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築していくことも重要な役割であると教職員は考えています。 世界で活躍する修了生の方々とのネットワークを、インドネシアだけでなく、世界の様々な国に広げていきたいと思います。
さて、前期課程を修了された方の中には、後期課程に進学し、研究者を目指し、さらなる研鑽を目指す方もいらっしゃいますが、多くの方は、修士・博士の学位を持つ、研究者、技術者、あるいは専門的職業人として、自立した新しい生活がこれから始まります。
今、科学技術は大変革の時代にあることが、様々な場で議論されています。我が国の科学技術の推進方策を議論している文部科学省の会議で、「現在の研究の最 前線では、測定、分析、計算技術の進展等により自然現象や社会現象に関する認識の範囲が急速に拡大しており、情報量の増加、計算科学の飛躍的進歩によ る情報処理速度の加速、交通・通信ネットワークの進展による情報の伝播・共有の高速化などを背景に、学術研究自体が急速に拡大し、その有り様が変化 している。生命科学、材料科学など広範な領域で新たな学際的・分野融合的領域が展開するなど、知のフロンティアが急速に拡大している。
そして、例えば、コンピュータ性能の飛躍的向上により、実験の代替・補完や未知の状況を予測するシミュレーションによる方法や、ゲノムデータ、地球観測 データ、人の活動データ等の多様なビッグデータの統合により新たな知を創出するデータ科学が台頭しつつある」と議論されています。
ICT技術は、先進国と言われている社会だけでなく、様々な社会基盤に展開することにより、新しい社会システムが生まれるかもしれません。また、ICT技術は科学技術の発展の駆動力にもなりつつあります。
ライフサイエンスの分野ではデータ駆動型サイエンスという新しいパラダイムが生まれ、モデル生物のシステムとしての理解に加えて、自然界の多様な動植物・微生物を理解し、保全・活用することが期待されています。
物質科学の分野でもマテリアルズインフォマティックスという言葉も登場しています。今後の科学技術の展開は、私たちの現在のイメージを超えたものになるのではないでしょうか。
皆さんには、奈良先端大の修了生として、こうした新しい科学技術の創造と活用に、主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。
そのために皆さんに求められていることは何でしょうか。最近、機会がある毎に紹介しているのでが、文部科学省の委員会の報告書にある、以下の文章を是非紹介したいと思います。
『知のフロンティアが急速に拡大している現代において、研究者に求められていることは、何よりも知を基盤にして独創的な探究力により新たな知の開拓に挑 戦することであり、研究者は常に自らの研究課題の意義を自覚し、明確に説明しなければならない(挑戦性)。新たな知の開拓のためには、学術研究の多様 性を重視し、伝統的に体系化された学問分野の専門知識を前提としつつも、細分化された知を俯瞰し総合的な観点から捉えることが重要である(総合性)。 また、異分野の研究者や国内外の様々な関係者との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出すことも求められる(融合性)。さらに、世界の学術コミュニ ティーにおける議論や検証を通じて研究を相対化することにより、世界に通用する卓越性を獲得し、世界に貢献する必要がある(国際性)』
皆さんには、こうした姿勢で、新たな社会、世界の創造に、主体的に取り組んでいっていただきたいと思います。
私は、本学での専門知識の習得はもちろんですが、学位論文研究を通して身につけた、課題を発見し、その解決法を考え、実践し、その結果を評価し、様々な人 と議論し、論文にまとめるという経験、そして、本学で築いた様々な人的ネットワークが、皆さんの今後の創造的な生活を保証していると確信しています。
皆さん、おめでとうございます。
今後の活躍を期待するとともに、今後も奈良先端科学技術大学院大学は、皆さんの活躍を支援していきたいと思います。
平成27年9月25日
奈良先端科学技術大学院大学長 小笠原直毅