〔プレスリリース〕植物ホルモンオーキシンは花幹細胞の増殖を止めて、果実づくりを促すスイッチとしてはたらく ~花が実をつくるために必要なメカニズムを解明・食糧の増産に期待~

研究成果 2017/10/25

 バイオサイエンス研究科 花発生分子遺伝学研究室の伊藤寿朗教授らは、植物の花が成長を停止して果実を作るときに植物ホルモンのオーキシンがはたらくという新たなメカニズムを発見しました。このとき、オーキシンは旺盛な増殖能力を持つ花の幹細胞の増殖を停止させ、一方で果実づくりを促すスイッチの役割を果たすことがわかりました。

 山口暢俊助教、伊藤教授らは、これまでに解析を進めてきた花の幹細胞の増殖を抑制する遺伝子である「KNUCKLES遺伝子」と「CRABS CLAW(CRC)遺伝子」の2つについて、双方が機能しなくなった二重突然変異体を作出。これを使ってCRC遺伝子が花の幹細胞の増殖の抑制に関わる仕組みを調べました。その結果、CRC遺伝子が作り出すタンパク質は、オーキシンを細胞外に排出する作用がある「TORNADO2」というタンパク質をコードする遺伝子に対して発現を抑制していました。このことから、オーキシンが花の成長の停止、果実づくりの促進に必要なことがわかりました。さらにオーキシンの働きを促したり、抑えたりする実験によって、このホルモンが花の幹細胞の増殖を抑えるようにはたらくことを裏付けました。

 本研究の成果は、植物ホルモンオーキシンのはたらきによって果実づくりを促進する可能性を示しており、食糧の安定的な供給につながると期待されます。この研究成果は平成29年10月24日付けでNature Communications(オンラインジャーナル)で掲載されました。

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