〔プレスリリース〕植物が光環境に応答して適切に道管細胞をつくる仕組みを解明 複数の遺伝子が役割分担、芽生えの制御も ~作物の水輸送能力強化による生産性向上に期待~

研究成果 2017/11/20

 バイオサイエンス研究科の出村拓教授、大谷美沙都助教らの研究グループは理化学研究所との共同研究により、植物が光環境に応答し、水を運ぶために使う細胞として道管細胞をつくるしくみの一端を解明しました。

 維管束植物は、水を運ぶことに特化した道管細胞によって、土中から吸い上げた水を全身へと送り届けます。これまで、この道管細胞は、VNDファミリーと呼ばれる転写因子群に含まれる複遺伝子のはたらきによってつくりだされることが分かっていました。しかしながら、VNDファミリー群はモデル植物シロイヌナズナでは7遺伝子、イネでは8遺伝子、トウモロコシでは6遺伝子、と複数個の遺伝子を含んでおり、それぞれ遺伝子間で役割分担があることが予想されていましたが、その実態については未解明のままでした。

 本研究では、新たに、植物ホルモン添加によって葉の細胞を道管細胞へと転換させるシステム『KDBシステム』の確立に成功しました。そしてこのシステム内での遺伝子の働きを調べることによって、これまで役割が分かっていなかったVND1〜VND3の3遺伝子が、子葉の道管細胞をつくる主要な遺伝子であることを明らかにしました。さらにこれら3つの遺伝子は、暗所で育てたときの子葉の道管形成に必須であることが分かる一方で、光条件に応答した芽生えの成長の制御を行っていることも示されました。このようにVNDファミリー内の遺伝子間の役割分担を初めて明らかにするとともに、植物は特定のVND遺伝子のはたらきを通して、光環境に応答した道管づくりを行っているという、新たなしくみが解明されました。

 この成果は米国の植物生理学会の学会誌であるPlant Physiology誌オンラインサイトに11月13日付で掲載されました。

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