〔プレスリリース〕神経軸索が正しい方向に伸びる仕組みを解明 ~進路決定のための高感度ナビゲーターが明らかに~ 脳疾患の解明や再生医療への応用に期待

研究成果 2018/08/07

 奈良先端科学技術大学院大学(奈良先端大、学長:横矢 直和)先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域の馬場健太郎研究員、稲垣直之教授、同大 研究推進機構の河野憲二特任教授、カリフォルニア大学デービス校のJames S. Trimmer(ジェイムズ・トリマー)教授、東京大学大学院 工学系研究科の渡邉力也講師らのグループは、神経細胞が細胞外の超微細な誘引シグナルの違いを高感度に感知して軸索が伸びる方向を決定するためのナビゲーター分子を発見し、その働きを明らかにしました。また、この進路決定のためのナビゲーター分子が働かなくなると、軸索が方向転換をすることができなくなり、脳内の情報ネットワークに異常が生じることも突き止めました。

 脳内の神経細胞は、軸索と呼ばれる長い突起を脳内の正しい場所に伸ばして、正しい神経細胞と結合することで脳の活動に必要な情報ネットワークを作ります。その方法の一つとして、軸索の先端がまわりの誘引分子を検知し、分子が多く存在する方向に向かって伸びることが知られており、走化性と呼ばれています。しかし、その仕組みはよくわかっていませんでした。稲垣教授らは、軸索が周囲に存在するネトリンという誘引分子のわずかな濃度差を検知してシューティンという軸索を伸ばす役割のタンパク質に伝えることにより、ネトリンが多く存在する方向に軸索伸長を誘導するという仕組みを解明しました。また、この仕組みが働かなくなるマウスを作製したところ、軸索が伸びる方向を決められず、脳内の軸索の走行経路に異常が生じることもわかりました。

 本研究の成果により神経ネットワーク形成やヒトの脳疾患についての理解が深まるとともに、再生医療への応用などが期待できます。この研究成果は日本時間平成30年8月7日(火)に英国の学術誌eLifeに掲載されます。

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