研究成果 2018/11/01
北里大学獣医学部 橋本 統 准教授、京都大学大学院農学研究科 舟場 正幸 准教授、奈良先端科学技術大学院大学 栗崎 晃 教授らの研究チームは、肝臓から分泌されるアクチビンEというタンパク質が、脂肪を燃焼させる褐色脂肪細胞の活性化やベージュ脂肪細胞の増加を促進し、エネルギー代謝を亢進させる作用を持つことをつきとめました。この新たな発見は、糖尿病などのメタボリックシンドロームの原因となる肥満の予防・治療の開発につながることが期待されます。
アクチビンEは、肝臓で特異的に作られる細胞の分化・増殖因子の一種として発見されましたが、長い間その機能は不明でした。今回アクチビンEを肝臓から過剰に分泌するマウスを作製したところ、対照のマウスと比べて血糖値が低く、インスリン感受性が向上しており、体温が高めでエネルギー代謝が亢進していることが分かりました。さらに、このマウスは高脂肪食を与えた場合でも体重増加が抑えられていました。白色脂肪組織を詳しく調べてみたところ、ベージュ脂肪や褐色脂肪のUcp1の量が増加し、ベージュ脂肪細胞自体も増加していたことから、脂肪組織において熱産生が盛んになり、エネルギー代謝が上昇していると考えられました。
一方、アクチビンE遺伝子を欠損させたマウスでは、寒冷刺激に対する反応が鈍く、白色脂肪組織中のベージュ脂肪細胞の減少が原因と考えられる低体温の症状がみられました。さらに、アクチビンEタンパク質を、培養した褐色脂肪細胞にふりかけたところ、Ucp1の量が増加したことから、アクチビンEに褐色脂肪細胞の熱産生を直接活性化させる働きがあることを確認しました。
以上の結果から、アクチビンEは、肝臓から分泌されるヘパトカインとして働き、褐色脂肪を活性化させ、白色脂肪でベージュ脂肪細胞を増加させることで、余分なエネルギーを熱に変換して消費させる役割があることが明らかになりました。このアクチビンEのダイエット効果は、糖尿病をはじめ種々の生活習慣病の原因となる肥満の治療薬につながる可能性があります。
本件に関する論文は、2018年10月30日午前11時(アメリカ東部時間)、国際学術誌Cell Reportsのオンライン版に掲載されました。