ツイッターの発言から花粉症の流行を推定するソフトを開発 患者本人のつぶやきだけを自動抽出 ~花粉症情報提供アプリ「花粉症ナビ - 人工知能で花粉症危険度をお知らせ」等をリリース~

2018/04/17

ツイッターの発言から花粉症の流行を推定するソフトを開発
患者本人のつぶやきだけを自動抽出
~花粉症情報提供アプリ「花粉症ナビ
- 人工知能で花粉症危険度をお知らせ」等をリリース~

【解説】

 ソーシャルネットワークサービスのひとつ「ツイッター (Twitter)」に投稿されている発言を自然言語処理することにより、その中から「花粉症」に関するつぶやきだけを抽出し、そのつぶやき数を都道府県ごとに集計し、前日比に基づく花粉症の流行度合いを、天気予報のようにチェックできるアプリケーションを開発しました。 都道府県単位の利用者の位置は、ツイッタ―での発言時にGPS(全地球測位システム)により付与された位置情報や、プロフィールで公開されている場所名などから、特定しています。 また、花粉症に関わるつぶやきの判定は、ソーシャル・コンピューティング研究室が開発している自然言語処理を用い、実際に「花粉症」に関わる症状で苦しんでいる人のつぶやき(「陽性」のつぶやき)のみを高い精度で抽出しています。表示される画面は以下の図のようになります。

プレス画像.jpg

 「花粉症ナビ - 人工知能で花粉症危険度をお知らせ」提供のホームページ
 なお、同様のアプリとしてインフルエンザ流行推定アプリ「インフルナビ」もリリースしています。
 「インフルナビ」提供のホームページ

 関連サイト:花粉症マップ

【謝辞】

 本研究の一部は、JST 戦略的創造研究推進事業さきがけ(研究課題名:自然言語処理による診断支援技術の開発、研究代表者:荒牧英治、2010〜2015年)及び JST 戦略的創造研究推進事業ACT-I (研究課題名:時空間×意味ギャップ解消による大規模ソーシャルメディアの医療応用に関する研究、研究代表者:若宮翔子、2016〜2018年)の助成により実施しています。

【背景と目的】

 花粉症は日本において国民症ともいわれる身近なアレルギー性の疾患です。植物の花粉によって生じる疾患であるため、花粉の飛散量をモニタリングし報告するシステムなどが提供されています。しかし、花粉の飛散量と花粉症者の症状にギャップがあること(例えば、花粉の飛散量の多少に関わらず、花粉症の症状で苦しんでいる人もいるなど)も報告されています。また、インフルエンザなどの感染症の場合とは異なり、病院に行かず市販薬などを購入して対策をする人も多いため、花粉の飛散量や病院にかかった患者数だけでは、花粉症で苦しんでいる人々の動態を把握することが困難です。当研究室では、花粉症で苦しむ人々を一種のセンサー(ソーシャルセンサーと呼んでいます)とみなし、ソーシャルセンサーのつぶやきを活用した花粉症サーベイランスに取り組んでいます。

【今後の展開】

 現在は、ツイッター (Twitter) の投稿を活用して、当日の花粉症の流行情報を提供しています。今後は、将来の花粉症流行を予測し、その情報も提供していく予定です。さらに、当研究室では、ユーザが自身の症状の有無をワンクリックで報告すると、位置情報をもとに近くにいる人の報告を確認することができるアプリケーションの開発を進めています。これにより、ツイッター (Twitter) の投稿だけではなく、オリジナルのデータを用いて、都道府県よりも詳細な地域単位での流行推定ならびに予測精度の向上を目指しています。

【用語解説】

 ツイッター
  「ツイート」や「つぶやき」と呼ばれる短文のテキストを共有することができるソーシャルネットワークサービス
 のひとつ。

 自然言語処理
  人間が日常的に使用している自然言語をコンピュータで処理する技術。AI(人工知能)の一つの技術。

 花粉症危険度推定の方法
  実際に「花粉症」に関わる症状で苦しんでいる人のつぶやき(「陽性」のつぶやき)を都道府県ごとに集計し、
 前日比を閾値によりレベル分けし、危険度を推定しています。

【本プレス リリースに関するお問い合わせ先】

 奈良先端科学技術大学院大学 研究推進機構研究推進部門
 ソーシャル・コンピューティング研究室 特任准教授 荒牧英治   
 TEL:0743-72-6053  E-mail:socialcomputing-office@is.naist.jp

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