研究成果 2021/06/16
アブシシン酸の輸送を介した気孔開度の調節
-二つのアブシシン酸輸送体の異なる機能を解明-
概要
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター適応制御研究ユニットの瀬尾光範ユニットリーダー、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域の清水崇史助教(理研環境資源科学研究センター適応制御研究ユニット客員研究員)らの共同研究チーム※は、気孔[1]の閉鎖を誘導する植物ホルモン[2]であるアブシシン酸(ABA)[3]の輸送が、植物体内で制御される新たな仕組みを明らかにしました。
本研究成果は、気孔の開度を人為的に調節し、植物の乾燥耐性や生産性を向上させるための技術開発に貢献すると期待できます。
ABAは主に葉の維管束組織[4]の細胞で合成され、孔辺細胞[5]まで運ばれます。これまでに、ABAの細胞内への取り込み、もしくはABAの細胞外への排出を担うタンパク質(輸送体[6])が複数同定されてきましたが、植物体内でのABAの動きがどのように調節されているかは完全には理解されていませんでした。
今回、共同研究チームは、シロイヌナズナ[7]においてABA輸送体として機能することが報告されていたNPF4.6[8]タンパク質が、葉の孔辺細胞でABAの取り込みを行うことにより、気孔の閉鎖を促進することが分かりました。さらに、NPF5.1[8]と呼ばれる別のタンパク質がABA輸送体として機能することを明らかにしました。NPF5.1は葉の維管束組織や葉肉細胞[9]などで細胞内へのABAの取り込みを行うことで、維管束組織から孔辺細胞へと輸送されるABAの量を制限し、気孔の閉鎖を抑制すると考えられます。
本研究は、科学雑誌『Genes』オンライン版(6月8日付)に掲載されました。
植物におけるNPF4.6(青矢印)とNPF5.1(赤矢印)が関与するアブシシン酸(ABA)の輸送
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奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科
バイオサイエンス領域 助教 清水 崇史(しみず たかふみ)
(理化学研究所 環境資源科学研究センター 適応制御研究ユニット 客員研究員)
<本研究内容についてコメント出来る方>
理化学研究所 環境資源科学研究センター 適応制御研究ユニット
ユニットリーダー 瀬尾 光範(せお みつのり)
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