ブックタイトルSENTAN May 2016 vol.25
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SENTAN May 2016 vol.25
分子情報薬理学研究室http://bsw3.naist.jp/courses/courses202.html梶紀子助教い形の器官で、壊れると病気になる。しかし、形成や機能を制御する分子レベルの機構は不明な点が多い。小林助教は「繊毛が伸びるときに、成長のきっかけになるタンパク質を見つけ、機能を明らかにしました。がん細胞には一次繊毛が生えないことが多いなど疾患によって特徴があり、将来的に治療に結び付けていきたい」と意気込む。(図2)「薬学部の出身なので真理の探究に加えて、医療や製薬への応用を念頭に置いています。それでも研究は深めれば深めるほど、わからないことが広がっていきますね」と振り返る。小学生のころからサッカーに親しみ、スポーツマンでもある。梶助教は、器官の表面を覆う上皮組織が、発生の過程で管状や球状など複雑な形に変化する際、どのようなシグナルの伝達機構が関わっているかを調べている。とくに、その分子メカニズムが破たんしたときに起きるとされる乳腺がんに焦点をしぼった。「乳腺の非常に複雑な枝分かれ構造が作られる過程と、がん化してその構造がなくなり、がん細胞が浸潤、転移するときの分子メカニズムを調べています」と説明。「3次元培養という乳がん細胞の塊をつくる実験法で、浸潤に関わるGPCRの候補がみつかってきた」と満足そう。(図3)「研究はうまくいかないことが多いので、そんなとき、自分だけが知っている新しいことを見つけたという喜びが一番大きい」と研究者の本音を明かす。インドネシア政府の派遣留学生、サルモコさん(博士後期課程1年生)も同じテーマで研究している。「乳がん細胞の浸潤に関わるGPCRが同定できれば、サルモコさん薬剤に反映できるので力が入ります」と意気込む。ガジャマダ大学薬学部の大学院を修了したあと、大学の教員を務めている。「本学は、教員も学生も高いレベルの研究力ですごくいい環境です。帰国しても医療関係の教員になりたい」と張り切る。インターネットのブログを書くのが趣味で、日本の文化や食事についてアップしたところ、「1日2000人ものアクセスがありました。日本に対する関心は髙いですね」。堀部修平さん(博士後期課程1年生)は、細胞分裂の起点になる中心小体という細胞小器官について、シグナル伝達が狂うと異常な分裂を起こすことについ堀部修平さんての研究を行っている。「Gタンパク質のシグナルと中心小体の複製が関係していることを初めて突き止めました。がん細胞にも同じような現象があり、がん化の解明につながれば」と期待する。「研究も日常生活もメリハリをつける」が信条。朝早くきて研究をはじめ、夜は自転車やジョギングに励む生活だ。(図2)一次繊毛は細胞外のシグナルを感知するセンサーとして働く。セロトニン受容体Htr6などの多くの受容体が一次繊毛に存在する。(図3)ヒト結腸癌由来細胞の三次元培養上皮細胞を細胞外マトリクス内で培養すると極性化したシスト構造を形成する。写真は細胞骨格や細胞間接着分子の免疫蛍光染色像。10