ブックタイトルSENTAN May 2016 vol.25

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概要

SENTAN May 2016 vol.25

TOPICS最新の研究成果物質創成科学研究科光情報分子科学研究室河合壯教授実用化水準の耐久性をもつn型カーボンナノチューブの熱電発電シートを開発~新しい無停電電源への応用期待~物質創成科学研究科光情報分子科学研究室の河合壯教授、野々口斐之助教、有機固体素子科学研究室の中村雅一教授らは、世界最高水準の発電性能と耐久性を有するフレキシブルな熱電発電(温度差発電)シートを開発した。特に有機材料の高耐久化の問題を改善するため、材料のカーボンナノチューブに食塩などを添加することにより、出力特性が従来の約3倍に向上したうえ、150度の温度で1ヶ月以上の性能保持を実現した。温度差により発電するシートは低温側がマイナスに帯電するn型とプラスに帯電するp型を直列に組み合わせて使うが、今回はn型の改良をめざした。この技術を使い試作した熱電発電デバイス(装置)は柔軟で、熱源に貼るだけで発電できることから、工業プラントや自動車の配管で生じる熱や、複雑な形状をもつラップトップコンピューターなどの排熱を利用した無停電の電力供給のほか、省エネや地球温暖化の抑制に貢献する応用が期待される。また、高耐久化により、熱電発電炭素材料の実用化への取り組みが加速しそうだ。この成果は、ドイツの国際科学誌「アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ」のオンライン速報版で公開された。バイオサイエンス研究科植物免疫学研究室西條雄介准教授植物が病原菌を識別し、免疫応答を強化する仕組みを解明~耐病性と増収を兼ね備えた作物に期待~バイオサイエンス研究科植物免疫学研究室の西條雄介准教授、山田晃嗣博士(現京都大学)らの研究グループは、悪性の微生物による細胞のダメージを感知、識別して植物免疫が強化される仕組みを明らかにした。植物は、微生物の侵入や感染を監視するため、微生物に特有の構成成分と特異的に結合する免疫センサーを細胞表面に配置し、補助タンパク質(BAK1)とともに複合体を形成して微生物の感染を抑える免疫応答を誘導する。しかし、このセンサーは植物の生長を助ける良性の微生物も認識することから、どのように見分けているか、詳細は不明だった。研究グループは、悪性の微生物がBAK1を取り除いて免疫応答のシステムを狂わせることに着目。人工的にBAK1を除去して、免疫応答を低下させた植物では、細胞の異常を感知するダメージセンサー(PEPR)とその情報伝達系が働いて免疫応答を増強するとともに、全身の細胞に警報を発して感染の拡大を防いでいることを突き止めた。植物の生長を増進する良性の微生物との相性を保ちながら、病害抵抗性が強化された作物の開発につながると期待される。この成果は、欧州科学誌「ザ・エンボ・ジャーナル」に掲載された。細胞ダメージセンサーPEPRが病原菌によるBAK1除去に応じて植物免疫を強化する仕組み。病原菌によるBAK1除去はBAK1に依存した微生物センサーが誘導する免疫応答を妨害する一方で、PROPEPペプチドの産生・放出を促し、PEPRを介した細胞ダメージシグナル系を活性化します。PEPRは、BAK1が無い条件下においてもBAK1と相同なSERKファミリーの一員を補助タンパク質として活用できるため、免疫活性化機能を発揮して病害抵抗性の維持・強化に働きます。13