ブックタイトルSENTAN May 2016 vol.25

ページ
20/24

このページは SENTAN May 2016 vol.25 の電子ブックに掲載されている20ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

SENTAN May 2016 vol.25

NAISTO B・OGに聞く「自分の考えを何度も論破され失敗を繰り返すことが未熟な部分を明確にし、その不足部分を補完することで、立派な研究者に成長できる」德永光Hikaru Tokunaga日産化学工業株式会社材料科学研究所半導体材料研究部Profil:2013年度博士前期課程修了(物質創成科学研究科生体適合性物質科学講座)昨年完成した材料科学研究所にて「人のやっていない研究がしたい!」生体適合性物質科学講座に配属されて、生意気な主張をしたことを鮮明に覚えています。「アミノ酸の精密重合」を研究テーマとしていただきましたが、未だに達成されていない研究は苦難の連続でした。結果を真摯に受け止め、得られた情報を客観的に整理し、考え得る理論的な道筋を立てる。そして、優先度を明確にして効率的な実験を行い、不正解をひとつずつつぶして正解を見抜いていく日々でした。その裏には、実験に対する曖昧な考察やデータ間で生じる矛盾を見逃さず「何故?」と問いかけ、「理論的な根拠」や「疑問を解決する方法の提案」を示せるまで議論して下さった先生方の支えがありました。また、時には豊富な文献や研究設備を活用し、別の時には研究室の垣根を越えて議論し、多角的な視点を養う機会の多い環境も研究の後押しとなりました。現在、私はNAISTで学んだ高分子合成の知識と技術を活かして、半導体製造で使用される機能性材料の開発に携わっています。合成した材料は、世界の半導体を牽引する大手メーカーと同等の装置で性能評価しており、最先端の技術に触れる喜びを感じています。近年、電子機器が目覚ましい早さで発展を遂げているため、材料開発は想像を絶する早さで行われます。しかし、業務は合成や評価だけでなく英語での材料紹介資料の作成、さらには海外のメーカーに足を運び英語でプレゼンや議論することも日常茶飯事です。英語の苦手な私は人一倍苦労していますが、材料紹介から採用に至るまでの一連の流れを経験できる数少ない研究と捉えて、有意義な毎日を過ごしています。このような多忙な業務を滞りなく消化できる背景には、限られた時間で成果を残す方法をNAISTで学べたことが影響しています。皆さんに認識して欲しいことは、企業は努力ではなく成果を評価するということです。これはがむしゃらに仕事をするだけでは達成できません。欲しい結果を意識し、理論や結果に裏付けされた戦略を立て、最低限の実験時間と実験数で人を納得させる効果的なデータを取得することが重要です。このスキルを身に着けるには、研究に誠実に向き合い必ず成果を出そうと想う強い意志が必要です。研究に真剣に取り組めば、自ずと考えが出てきますが、それは人を納得させるに値する考えでしょうか?完璧と感じても先生方と真剣に議論すると、完全に論破されて考えの未熟さを思い知るでしょう。私は、何度も何度も論破され失敗を繰り返すことが未熟な部分を明確にし、その不足部分を補完し続けることで、どの企業でも通用する立派な研究者に成長できると感じています。初期検討は小さいシリコンウエハーを使って実施19