ブックタイトルSENTAN せんたん JAN 2019 vol.27
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SENTAN せんたん JAN 2019 vol.27
知の扉を開くPETを食べる細菌を発見、仕組みを解明して環境改善に役立てるバイオサイエンス領域環境微生物学研究室教授紹介PETから生体の構成成分やエネルギーを得ているらしい。このような細菌は、ほかには報告されていません」と強調する。2つの酵素が連係吉田昭介特任准教授蜂須賀真一博士研究員廃プラスチックの処理は世界的な課題飲料水の容器に使われているPET(ポリエチレンテレフタレート)などのプラスチックの廃棄物が、自然環境に蓄積して悪影響を与えているため、削減することが世界中で大きな課題になっている。化学合成して作り出されたPETは廃棄されるときに、リサイクルや焼却など人工的な処理を行っているものの、膨大な量の廃プラスチックをすべて収集して処理するには、能力やコストの限界がある。そこで、注目されはじめたのが、たとえ人工物であっても微生物が進化し、分解できるようになるという自然界のシステムの探索と応用だ。吉田特任准教授らは、世界で初めてPETを分解する機能を持つ細菌(イデオネラ・サカイエンシス)を発見。さらに、この細菌がPETを分解するだけでなく、代謝して食べていることを示した。抜本的な環境改善につながる可能性を秘めた研究成果は米科学誌「サイエンス」に掲載された。吉田特任准教授は「この細菌はPETをリサイクルする工場内で、幸運にも見つかりました。どうやら特殊な酵素を使ってなにしろ、この菌は、PETだけを栄養源(炭素源)にして増殖するのだ。実験ではフィルム状のPETを使い、採取したサンプルを加えて培養する方法で約250のサンプルを試した。その結果、フィルムの周りに集まる様々な種類の微生物が見出された。イデオネラ・サカイエンシスはこの集合体から選抜された。そのフィルムの表面を、電子顕微鏡で観察すると、なんとくぼみが無数にうがたれ、エサにしていることが確かめられた。▲(A上)PETフィルム上で生育するイデオネラ・サカイエンシスの電子顕微鏡画像(A下)フィルム表面を洗浄後、観察される分解痕(B)イデオネラ・サカイエンシスは2種の酵素(PE T a s eとMHETase)によりPETを段階的に単量体まで分解する。本菌はこれらの単量体を代謝して、二酸化炭素と水まで分解することができる。0 9 S E NTAN