ブックタイトルSENTAN せんたん JAN 2019 vol.27

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概要

SENTAN せんたん JAN 2019 vol.27

知の扉を開く目薬の機能を高め、新たな眼病治療の道を拓く物質創成科学領域機能高分子科学研究室教授紹介図1本田崇宏客員教授榎本裕志客員教授岡部高明客員准教授薬の運び屋を探索人は生活情報の約8割を視覚から得ているとされ、その窓口として光を受け入れる眼は重要な感覚器だ。入射した光はレンズ役の水晶体などを通って、眼の奥の網膜に像が結ばれ、そこにある多数の視細胞が情報を視神経に伝えて、脳が知覚する。一方で、眼は、見るという機能のために、直接、外界と接しているので、眼球の表面に異物の侵入を防ぐバリアとなる細胞層が何重にも備わっている。このため、眼の病気の治療の際に、点眼薬が眼球内部にまで入り込んで効果を発揮することを困難にしているのだが、最近になってその大きな課題の突破口がみえてきた。それが薬剤を眼球内部にスムーズに運ぶ、新しいタイプのドラッグデリバリー(薬物輸送)システムで、最先端で研究開発してきたのが機能高分子科学研究室だ。本学と医療用眼科薬の大手メーカーである参天製薬との連携講座で基礎、応用の両面から取り組んでいる。本田客員教授は「点眼液は、結膜炎など眼球表面の病気なら十分に治療効果がありますが、内部に原因箇所がある緑内障、白内障、網膜に異常が生じる加齢黄斑変性症では、薬が十分に届かないことがある。そこで、複数のアミノ酸が結合したペプチドという物質を薬の運び屋にしてバリアを通り抜けやすくする方法を研究しています」と語る。そのペプチドは細胞膜透過性ペプチドと言われ、細胞膜に効率よく付着したあと、細胞の取り込みの機構(マクロピノサイトーシス)を誘発して、するっと内部に入るので、運ばれる比較的高分子のものまで取り込みが可能である。30年前に発見されたあと、さまざまなタイプのペプチドが見つかり、糖尿病などの治療に使う研究が進んでいるが、眼科に関する研究はほとんどない。バリアを通り抜けたそこで研究室で見つけた有力な候補の一つが、アルギニンというアミノ酸を8個結合したオクタアルギニン。この物質を細胞が認識1 1 S E NTAN