ブックタイトルSENTAN せんたん JAN 2019 vol.27

ページ
6/24

このページは SENTAN せんたん JAN 2019 vol.27 の電子ブックに掲載されている6ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

SENTAN せんたん JAN 2019 vol.27

特集石田准教授PD-1研究についてノーベル生理学・医学賞受賞の本庶佑・京都大学特別教授が開発したがん免疫療法の治療薬研究の原点のタンパク質「PD-1」を発見した石田准教授に聞く2018年のノーベル医学・生理学賞に輝いた本庶佑・京都大学特別教授の受賞対象になった業績は、免疫を抑制する受容体タンパク質「PD-1」を画期的ながん免疫療法の治療薬(抗PD-1抗体薬)として発展させたことにある。この「PD-1」を発見、命名した本学バイオサイエンス領域の石田靖雅准教授は、基礎医学の立場から、がん細胞を狙い撃ちできる詳細な仕組みなどを研究している。石田准教授に恩師である本庶特別教授との関わりや、「PD-1」研究の可能性などについて聞いた。すべては執着心―本庶佑先生がノーベル賞を受賞されましたが、いまのお気持ちは。ただただうれしくて、感動しています。2014年に、皮膚がんの一種、悪性黒色腫の治療薬として承認されて以来、60か国以上で多くのがん腫について適応されているので、受賞は間違いなかっただけに、それがいつになるかと心待ちにしていました。スウェーデンでのノーベル賞授賞式にも、同行させていただき、ありがたいと思っています。―受賞の発表当日は本庶先生とコンタクトはありましたか。当日は、記者会見などでごった返していたので、電話をせずにパソコンから「おめでとうございます」とお祝いのメールを送りました。うれしいことに、その日の夜に本庶先生自身のスマートフォンから「すべては君の執着心からです。ありがとうございます」と短いメッセージが返ってきました。それを読んで「あのとき一生懸命実験してよかったな」と思いました。ただ、多数のメールの中から、どうして私の送信したメールを見つけることができたのかは、謎ですが。自己と非自己の識別に関心――石田先生がこのタンパク質の遺伝子を1991年に発見したとき、「PD(プログラムド・デス)-1」と命名されたのは、免疫を担当するT細胞(Tリンパ球)が自死する、つまり「アポトーシス(細胞の死)」を引き起こす際に働く遺伝子を探索されていたからですか。「PD-1」がT細胞の細胞死の最初の段階で自己と非自己を識別する際に関わる遺伝子であってほしいという願いを込めて命名しました。しかし、その後、研究を引き継いだ後輩の大学院生が調べたところ、T細胞の細胞死に直接に関与する遺伝子ではなかった。ただ、自己と非自己の識別に深く関わる遺伝子だったからこそ、オプジーボのような抗体を投与してPD-1の機能を弱めると、自己と非自己の間を漂うがん細胞を免疫のシステムが察知して攻撃を始める。つまり、PD-1には何が自己で何が非自己かという境界の線引きをする役目があったんですね。―この遺伝子を発見するための実験方法もまさに執着心のなせるわざだったのですか。まずT細胞が細胞死するときにだけ発現する遺伝子を突き止めるため、そうでない状態で発現している遺伝子を引き算(サブトラクション)して調べるという実験計画を立てたところ、本庶先生から「100を超えるような数の候補遺伝子がみつかる可能性がある。それではだめだ」と言われました。そこで、T細胞とは異なる骨髄前駆細胞が細胞死するときに発現する遺伝子についても同0 5 S E NTAN