ブックタイトルSENTAN せんたん MAY 2019 vol.28

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概要

SENTAN せんたん MAY 2019 vol.28

バイオサイエンス領域植物発生シグナル研究室中島敬二教授性分化を制御する植物共通の遺伝子を発見ゼニゴケの性差を生み出すスイッチ機構が明らかに先端科学技術研究科植物発生シグナル研究室の中島敬二教授と、京都大学大学院生命科学研究科遺伝子特性学研究室の河内孝之教授の研究グループは、陸上植物に共通した性分化制御遺伝子を世界で初めて発見した。また、ゼニゴケは、この遺伝子をつくるDNA二本鎖の表側と裏側を巧妙に使い分けることで、雌雄の性差を生み出すスイッチとして利用していることも明らかにした。研究グループは、陸上植物の最も古い状態を残し、雌雄が別の個体に分かれているゼニゴケと、最も新しい被子植物に属し雌雄の生殖器官が1つの花に共存しているシロイヌナズナについて、メスの生殖器官ではたらく遺伝子を比較。共通して発現する遺伝子23組の中から、シロイヌナズナでメスの生殖器官形成にはたらくFGMYBに注目した。ゼニゴケでFGMYB遺伝子を破壊すると、メスの形態がほぼ完全にオスに転換したことから、FGMYBがメスになるための必須遺伝子であることを突き止めた。さらにオスのゼニゴケではこの遺伝子の働きが何らかのメカニズムで抑制されていると考え解析を進めた。その結果、ゼニゴケのFGMYB遺伝子ではDNA二本鎖のうち、FGMYBの遺伝情報をコードする鎖とは反対側のDNA鎖からのみ情報が読み出されており、これを抑制するとオス個体の形態が、ほぼ完全にメスに切り替わることを発見した。この成果は欧州分子生物学機構の科学誌「The EMBO Journal」に掲載された。最新の研究成果バイオサイエンス領域植物発生シグナル研究室宮島俊介助教世界初!植物の幹や根が太る側方成長を制御する巧妙な仕組みを解明~作物や樹木の成長強化、収量の向上に期待~先端科学技術研究科植物発生シグナル研究室の宮島俊介助教、中島敬二教授と、フィンランド、英国との国際共同研究グループは、樹木の幹が太くなるなど植物の肥厚(側方成長)の仕組みの中で、その出発点である根の先端の前形成層での細胞分裂を活性化するPEAR遺伝子群を世界で初めて発見した。また、植物はPEAR遺伝子により、様々な細胞同士の情報のやり取りを統合し、側方成長を後押しする細胞分裂を3次元的に調節していることも世界で初めて分子レベルで明らかにした。研究グループは、維管束植物のモデルであるシロイヌナズナの若い根の前形成層の肥厚の際の細胞分裂が、養分を運ぶ師部細胞とその周囲の細胞群に集中していることを見出した。そこで、この仕組みを制御する分子機構を解明するために、師部細胞で特異的に発現するPEAR遺伝子群に着目。実験の結果、PEARタンパク質は、師部細胞で作られたあと、原形質連絡という細胞間を繋ぐトンネルを通って移動し、活発に分裂する細胞群に蓄積することがわかった。さらに、実験を重ねたところ、PEARタンパク質が、植物ホルモンや低分子量RNAを介した細胞間の情報のやり取りを制御し、根の前形成層の細胞分裂を空間的に統御する鍵因子であることを突き止めた。この研究成果は、植物の肥厚を自在に操作し、根菜類など農作物の収量増加やバイオエネルギーの安定供給に繋がることが期待されるもので、英科学誌「Nature」のオンライン版に発表された。12 S E NTAN