ブックタイトルSENTAN せんたん MAY 2019 vol.28
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SENTAN せんたん MAY 2019 vol.28
バイオサイエンス領域植物成長制御研究室梅田正明教授細胞増殖を止めてストレス対策をする植物独自の仕組みを解明環境の変化に負けない、食糧や植物バイオマスの安定的生産に期待先端科学技術研究科植物成長制御研究室の梅田正明教授、高橋直紀助教らは、ストレスを受けた植物が、ストレスに対処するためのエネルギーと時間を確保するために、細胞分裂を止めて増殖を抑えようとするメカニズムの詳細を世界に先駆けて発見した。また、植物は外界から受けるさまざまなストレスに対して、同一のメカニズムを発動させることにより効率的に対処するという巧妙な生存戦略を明らかにした。モデル植物のシロイヌナズナのDNAに損傷を与えると根の伸長が停止するが、梅田教授らは、遺伝子の働きを調節する転写因子というタンパク質の中で、「ANAC044」「ANAC085」という2つの転写因子の機能がなくなった変異体では細胞分裂が停止せず、根が伸び続けることを見出した。さらに、これらの変異体ではDNAに損傷を与えても根の組織構造が健やかに保たれることも突き止めた。そこで、この2つの転写因子の働きを解析したところ、細胞分裂を抑制する別の転写因子を安定化させることにより、細胞分裂を止める作用があることを解明した。これらの転写因子は植物が高温に曝された際にも機能しており、ストレスに応答した細胞分裂の停止機構として中心的な役割を持つことが明らかになった。この成果は、さまざまなストレスがある自然環境下で細胞分裂を止めずに成長を続けさせ、食糧やバイオマスを安定的に生産する技術開発に、新たな方向性を与えると期待される。論文は、オープンアクセス誌「eLife」に掲載された。その他の研究成果一覧2019.1根が適切な間隔で分岐する仕組みに働く植物ペプチドを発見バイオサイエンス領域植物発生シグナル研究室郷達明助教触媒で分子をチューンアップ~炭化水素の結合を組み換えて付加価値を高める不斉触媒~物質創成科学領域マテリアルズ・インフォマティクス研究室畑中美穂特任准教授漫才台本自動生成機能を持つ「漫才ロボット」による笑いの実証研究を医療現場で実施情報科学領域ソーシャル・コンピューティング研究室荒牧英治特任准教授2019.2いいかげんに働く細胞たちが協調してからだを作る仕組みを解明~リズムを刻む体内時計によるノイズキャンセル機構~バイオサイエンス領域遺伝子発現制御研究室松井貴輝准教授2019.3生体内の細胞1個ずつについて遺伝子の働き具合を調べる手法を開発切断されたコケの細胞の初期化、再生に伴う個別の変化をつきとめる~生き物の形作りや刺激応答の仕組み解明に期待~研究推進機構久保稔特任准教授S E NTAN13