ブックタイトルSENTAN せんたん MAY 2019 vol.28
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SENTAN せんたん MAY 2019 vol.28
NAIST OB・OGに聞く八角柱状に40枚のディスプレイを配置したVR装置の動作確認中。2017年ごろ大隈隆史Takashi Okuma産業技術総合研究所人間拡張研究センタースマートワークIoH研究チーム長Profile:1998年度博士後期課程修了(情報科学研究科ソフトウェア基礎学講座)IEEE VR 2019@大阪WSWTにて将来かけがえのないものになる」得られる専門分野の知識、経験、人のネットワークは、「学生時代に必死で乗り越える研究活動を通して現在、私は経済産業省系の国立研究開発法人である産業技術総合研究所において、「はたらく人の活動を工学的に支援する技術の研究開発」をチームのテーマに据え、行動計測・可視化・分析・シミュレーション・AR(拡張現実感)の技術を使った作業支援、人間拡張技術によるトレーニングなど多様な技術を統合的に活用する研究開発を推進しています。NAIST修了後に現所属の前身である電子技術総合研究所に入所してから早いもので20年が経ちました。改組はあったものの一つの組織で長く研究活動に取り組めており、今のところ、大変恵まれた研究人生を歩んでいます。とはいえ、ずっと引きこもって研究をしていたわけでもなく、米国コロンビア大での2年間の在外研究と経済産業省への2年間の出向を経験しました。それぞれ全く違った意味で視野を拡げることができ、大変よい機会でした。NAISTでは3次元GUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)に関する研究やARに関する研究に取り組みました。いまやスマートフォン上のアプリにも登場するAR技術ですが、当時は高性能グラフィックスボードを搭載したシリコングラフィックス社製の計算機上で、OpenCV(自由に使用できるコンピュータビジョン向けのライブラリ)の影も形もない時代に、キャプチャしたライブ画像を実時間処理してカメラの位置姿勢を推定し、まだ黎明期のOpenGL(描画ハードウェア向けのライブラリ)を駆使してCGの合成を行いレンダリング(表現)するというARの実装に悪戦苦闘しました。現学長の横矢直和先生と当時助教授の竹村治雄先生(現大阪大学教授)にゼミや発表練習でご指導いただき、次々と対外発表やデモ展示を行う目まぐるしい日々を過ごしたことを懐かしく思い出します。当時身につけた画像処理・CV・CG・VR・ARの基本的な知識だけではなく、元になっている理論と設計コンセプトを理解した上でライブラリを活用する開発スキルに加えて、デモシステムを構築して実際に研究コンセプトを目に見える形で示すことで多くの経験と意見を得ながら完成度を高めていくという研究開発のスタイルまで、現在の研究活動におけるすべての基礎をこの時期に叩き込まれました。また、研究室を通してのつながりがある方々はもちろん、当時学会発表やデモ展示を通して名前と顔を覚えていただいた先生方にも、NAIST卒業後から今日に至るまでの様々な場面でお世話になり、今の自分があると思います。学生時代に必死で乗り越える研究活動を通して得られる専門分野の知識、経験、人のネットワークは、将来かけがえのないものになるということを、体験から得た実感として今の学生の皆さんにもお伝えしたいです。NAISTはみなさんが今感じている以上に恵まれた環境だと思います。充実した学生生活をお過ごしください。16 S E NTAN