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概要

SENTAN SEP2019 vol.28

情報科学領域計算システムズ生物学研究室モハマド=アルタフ=ウル=アミン准教授生物の放出する物質と生物同士の複雑な関係を読み解くデータサイエンスの方法を開発~食材の栄養成分と味、香りなどの関係解明にも期待~情報科学領域計算システムズ生物学研究室のMd.Altaf-Ul-Amin(モハマド=アルタフ=ウル=アミン)准教授のグループは、生物と物質など2種の異なった属性からなるデータが集積した二部構造を持つ大規模なネットワークについて、例えば、生態系の中の多数の生物とその生物が放出する多様な揮発性生化学物質の関係を視覚化し、分析するための方法を考案した。この研究は「二部グラフ・クラスタリング法」というデータサイエンスの手法を使ったもので、世界的に高く評価され、情報科学分野の最高峰の国際論文誌IEEETRANSACTIONSに採録された。データサイエンスが注目され、さまざまな分野への応用が期待されている。今回、開発した方法を使うことにより、多くの要素が複雑に関わる現象を読み解くための分析に応用することが可能。例えば、生態系において様々な生物が互いの誘引物質や忌避物質を放出することによって化学的に会話しているという関係性をネットワークとして理解できる。また、世界中のさまざまな料理に含まれる食材やそこに含まれる栄養成分の配合と味、香りなどの関連を体系的に把握することも可能。このようなネットワーク解析をもとにしたアプローチは、ビッグデータ医療、エコシステムの解明など社会の様々な領域のデータ同士の関係性から有用な情報をとりだすマイニング(データの採掘)ならびに体系化のための手法として重要であり、今後さまざまな発見を導く可能性が開けた。最新の研究成果バイオサイエンス領域植物成長制御研究室梅田正明教授細胞増殖を止めてストレス対策をする植物独自の仕組みを解明~環境の変化に負けない、食糧や植物バイオマスの安定的生産に期待~バイオサイエンス領域植物成長制御研究室の梅田正明教授、高橋直紀助教らは、ストレスを受けた植物が、細胞分裂を止めて増殖を抑えることにより、ストレスに対応するためのエネルギーと時間を確保するというメカニズムの詳細な仕組みを世界に先駆けて発見した。外界からのさまざまなストレスに対し、植物は同じメカニズムを発動させて効率的に対処するという巧妙な生存戦略を明らかにした。モデル植物であるシロイヌナズナのDNAに損傷を与えると根の伸長が停止するが、梅田教授らは、遺伝子の働きを調節する転写因子というタンパク質の中で、「ANAC044」、「ANAC085」という2つの転写因子が機能を失った変異体では細胞分裂の停止はなく、根が伸び続けることを見出した。また、これらの変異体ではDNAに損傷を与えても根の構造が健やかに保たれていることも突き止めた。この2つの転写因子の働きについて詳しく解析したところ、細胞分裂を抑制する別の転写因子を安定化させることにより、細胞分裂を止める作用があることを解明した。さらに、興味深いことに、植物が高温ストレスに曝された際にも機能していることがわかり、ストレスに応答した細胞分裂の停止機構として中心的な役割をもつことが明らかになった。さまざまなストレスに曝される野外で、食糧や植物バイオマスを安定的に生産する技術開発に、新たな方向性を与えるものと期待される。この成果はeLife(オンラインジャーナル)に掲載された。13 S E NTAN