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概要

SENTAN SEP2019 vol.28

知の扉を開く生命活動を調節するマイクロRNAの微細な動向を解明し、病気の源を探るバイオサイエンス領域RNA分子医科学研究室教授紹介岡村勝友教授島本廉助教意味な塩基配列(イントロン)を切り離すスプライシング(切り継ぎ)が行われる際に「ミュートロン」というmiRNAができることを見つけ、2007年に米科学誌「Cell」に発表した。それまで、miRNAは酵素(ドローシャ)などがRNAの特定の領域を切断してできるとされてきたが、酵素を使わずにRNA生合成機構の中で生じるという別ルートも使い分けていたのだ。さらに、リボソームを構成するRNAになる元の分子(前駆体)からもできていることも突き止め、miRNAにさまざまな生合成経路があり、臨機応変に制御されていることを示した(図1)。生命の維持や生物の形づくりに欠かせないタンパク質の情報は遺伝子DNAの長い鎖状の分子に記されている。必要なタンパク質は、それに該当する部分の遺伝情報をメッセンジャーRNA(mRNA)という分子がコピーして製造工場(リボソーム)に持ち込み、そこで合成される。こうした生命の営みの基本的な仕組みを正常に保つために、マイクロRNA(miRNA)という小さな分子がさまざまな段階で重要な役割を果たしていることが分かってきた。miRNAの分子はタンパク質の情報を持たず、遺伝情報を示す塩基という分子がわずか20個ほど連結し、二つ折りのヘアピンのような構造から切り出されて作られる。しかし、その種類はこれまで判明しただけで2,500を超え、がんなどの病気にも関係するという研究もあって医薬品開発でも注目を浴びている。「細胞内には、常にスプライシングなど様々なRNA切断機構が備わっているので、進化の過程でたまたま、それらの機構を借用してmiRNAを作るようになったのではないか、という仮説を立てています。このような多様な分子機構がどのようにmiRNAの存在量の厳密な調節に役立てられているかに注目しています。」と岡村教授は説明する。?図1 miRNA生合成経路の多様性ミュートロンの発見を契機に多数の非典型的miRNA生合成経路が発見された。複数のルートで作られていたがん組織との関連究明は急務の課題岡村教授は、miRNAが発見される前後の2000年ごろから小分子RNA研究に挑んだ。その結果、miRNAの生合成の仕組みについて、RNAが機能を持つ分子に整えられる過程で、無今年1月に本学に赴任した岡村教授は、こうした実績を発展させる形で、新たなテーマに取り組んでいる。「miRNAは、その遺伝子を転写して生合成され、その後、様々な酵素が関わって機能を持つ成05 S E NTAN