ブックタイトルSENTAN SEP2019 vol.28
- ページ
- 8/20
このページは SENTAN SEP2019 vol.28 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは SENTAN SEP2019 vol.28 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
SENTAN SEP2019 vol.28
知の扉を開く量子で光を創り、光で量子を操る物質創成科学領域量子物性科学研究室教授紹介柳久雄教授水野斎助教香月浩之准教授通信の要になる超高速の量子コンピューターについても、実現のベースになる技術を研究しています」と強調した。柳教授らの研究は、量子力学というナノ(10億分の1)メートルサイズの原子・分子レベルの世界で起きる現象を解明する物理学に基づいている。それは、光や、物質中の電子は量子であり、「粒子」の性質を持つが、「波」の性質も示すというもの。そこでは複数の波形の山と谷の位置が重なれば強め合い、ずれれば打ち消し合う「干渉」という特徴的な現象が生じる。さらに、物質中の電子は、分子の箱(量子箱)の中に閉じ込められ、その中で電子は、それぞれのエネルギーレベルに応じた軌道(分子軌道)上で波としてふるまう。発光の仕組みは、高いレベルの軌道に励起された電子が、再び低い軌道に戻るときに、放出するエネルギーが光になる。時間遅れの反応があった有機材料でレーザーを実現膨大な情報処理や通信をすべて光を使うことで高速化し、電力消費の急増を大幅に抑えるフォトニックネットワークのプロジェクトが進んでいる。そこで大きな課題のひとつが、一般家庭では外から取り入れた光の情報を電気の情報に変換している現状を、光の情報がそのまま使用できるような回線や装置に換え、省エネ効果を高めることだ。このため、低コストで加工し易い有機材料が持つ光機能の特性を生かす研究が盛んになっている。こうしたことから、柳教授は、「分子設計がしやすい有機材料の特性を十分に生かす形で、光通信の光源など発光を担う有機レーザーを開発しています」と説明。さらに、「次世代の情報処理・柳教授らの研究材料は、有機半導体の特性がある「チオフェン・フェニレン・コオリゴマー」(TPCO)という有機化合物。「この分子に含まれる環構造の数や順序を変えると、青から赤までさまざまな可視光が出せます。また、光を増幅する共振器のように結晶内に光を閉じ込める効果も確認できました」と有機材料ならではの多様な光機能を解明してきた。そして、この化合物を使い、光で励起するタイプの有機レーザーの発振に成功した。電子をエネルギーの高い軌道に偏らせる「反転分布」の状態にしたあと、「誘導放出」という現象により連鎖的に光子が生じ、それらが互いに波をそろえて増幅することで、さまざまな色の波長をもつ強い可視光領域のレーザー光が出せた。07 S E NTAN