ブックタイトルSENTAN せんたん JAN VOL.29
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SENTAN せんたん JAN VOL.29
炭素をつないで新素材の限りない未来を拓くあらたになおき荒谷直樹准教授物質創成科学領域有機光分子科学研究室次世代の素材開拓者たちの古くから研究されてきた炭素だが、いまでも、その原子を組み合わせた分子構造を変えることによってエレクトロニクスなど産業のニーズに応える全く新しい能力を生み出せる。中でも次世代の素材とされるグラフェンという化合物は、炭素原子6個が結合した化合物(ベンゼン環)がハチの巣のように並んで、原子1個分の厚みの平面になるという特殊な構造から、電子材料として非常に優れた特性を発揮する。荒谷准教授は、こうしたナノカーボンと総称される炭化水素の構造を設計し、化学反応を重ねてパズルのピースを組み立てるボトムアップ方式により、安定した物性を示す化合物を合成し未知の特性を調べている。科研費基盤研究(B)に採択されたテーマでは、わずかな構造の違いで物性が大きく変化するナノカーボンを使い、これまでにない有用な電子物性をもつ材料を開発している。「ナノカーボンには筒状のカーボンナノチューブなども含まれますが、バルクの材料からトップダウンの方法で取り出して調べると、試料によって大きさやエッジ(ふち)の分子構造の違いができて、一義的な物性のデータが得られません。そこで、逆に、ベンゼン環から始めて分子構造を大きく広げていく方向で合成することで、確実に望みの物性を引き出すことが必要」と強調する。2枚重ねのグラフェンができた情報社会を支えるIT技術は多様化の一途をたどり、常に高性能な材料、デバイスが求められている。今回は、日本学術振興会の科学研究費助成事業に採択された、物質創成科学領域の荒谷直樹准教授のグラフェンなど次世代の素材とされる炭素化合に有用な機能を持たせる研究、服部賢准教授の3次元半導体を実現する要となる表面処理の研究を紹介する。これまでの成果は、グラフェンのモデルとなる様々なシート状化合物2枚を0.3ナノ(10億分の1)メートルの間隔をあけて重ねる合成に、金属触媒を用いて成功したこと。「2層グラフェンは、シートが重なる角度によって絶縁体になったり超電導になったりして、全く別の物質になるところが非常に興味深い。精緻なモデル分子で重なる角度や表裏の重なり方の違いにより物性がどのように変化するか調べていきたい」と荒谷准教授は抱負を語る。また、挑戦的研究(萌芽)では、グラフェンを構成する6角形のベンゼン環の一部を5角形や7角形に替えて湾曲したシートを作る方法を調べている。「通常は硬い平面のシートですが、曲がることで電荷の流れやすさが変化します。例えば、3次元の半導体として使うときに分子レベルの性能の調整にも役立つデータです」と説明する。13 S E NTAN