ブックタイトルSENTAN せんたん JAN 2022 vol.30

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SENTAN せんたん JAN 2022 vol.30

知の扉を開く微生物とともに生きる植物の免疫システムを解明するバイオサイエンス領域植物免疫学研究室西條雄介教授して免疫を誘導したり、環境適応に役立つ方向に共生菌のふるまいをコントロールしたりする仕組みを明らかにしたい」と抱負を語る。環境センサー病原菌と共生菌安達広明助教植物はヒトと同様に、体内に細菌やカビなど様々な微生物を宿しており、自身を攻撃する悪玉の病原菌には抵抗する一方で生育を助けるなど善玉の共生菌とは共存するという柔軟な戦略を取っている。細胞の表面に、微生物などの異物や自身の細胞破砕成分を見分けるセンサー(免疫受容体)を備えていて、微生物の「善悪」の判断に役立てている。さらに、微生物が分泌する感染促進因子(エフェクター)のタンパク質も細胞内の免疫受容体で識別して対処することがわかってきた。西條教授は、植物が細胞に受けたダメージも免疫センサーでいち早く感知することで、病原菌を認識し、免疫応答を強化する仕組みを明らかにするなどの実績がある。「植物に共生している菌は、環境条件次第で、善玉菌にもなれば悪玉菌になることがあります。そういった変化を宿主の植物が柔軟に感知植物体を構成する細胞同士の隙間などには多種の微生物が常在していて、その状況を植物のセンサーがモニターし、微生物集団が適正な状態にあるかどうかをチェックしている。多様な微生物群自体がバリアとなり、特定の菌の侵入や増殖が難しくなる。あえて免疫応答を誘導せずとも感染拡大を防ぐことができるのだ。一方、植物の細胞内部の生成物が流出するというダメージがある場合、そこに特定の種類の微生物が増えていれば、悪玉の攻撃が始まったとして免疫システムを活性化する。西條教授が注目するのは「湿度」という環境の変化をセンサーが感知し、免疫を誘導するシステム。湿度が高まると微生物が増殖し、植物に病害が起きやすくなるため、植物の免疫系が反応すると見られているが、湿度センサーそのものについては未解明だ。そこで、植物の細胞膜を貫通して水を取り入れるアクアポリンというタンパク質に着目。湿度の上昇により活性化されることなどをつきとめ、未知の湿度センサーとの関連を調べている。「水は微生物が増殖する環境づくりに必要で、病原菌は免疫受容体に感知されるリスクがあるエフェクターを使って水を集めます。植物には、微生物が増殖して悪玉になりやすい湿度を感知するセンサーがあり、それが免疫を誘導しているのかもしれません」と推測する。栄養をめぐる適応の仕組み植物と微生物の関係性は湿度、温度、光、栄養などの環境条件によって大きく左右される。また、西條教授は、植物の「栄養」をめぐる適応の仕組みも?07 S E NTAN