ブックタイトルSENTAN せんたん MAY 2021 vol.30
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SENTAN せんたん MAY 2021 vol.30
人の知覚に寄り添った情報提供サービスを実現するまつだゆうき松田裕貴助教情報科学領域ユビキタスコンピューティングシステム研究室センサと知覚の差開拓者たちの科学技術振興機構(JST)の令和2年度戦略的創造研究推進事業(さきがけ、個人研究)に松田助教が採択されたテーマは「人の知覚を用いた参加型IoTセンサ調整基盤の創出」。スマートシティの街角には至る所にIoTセンサが取付けられ、気温、騒音、明るさなど環境データが常時取得される。これらのデータを組み合わせ、統合して計算処理し、環境の状況を推定するのだが、松田助教はセンサで測定したデータと人が知覚した情報が必ずしも一致しないことに着目した。「例えば、静かな寺院において70デシベルの音量は騒がしいと感じます。ところが、滝に程近い寺院では、80デシベルの音量でも荘厳であると不快に感じない。こうしたセンサと人のズレを、視覚・聴覚などを介して人がどう知覚したのか?という情報を用いることで補正する必要があるのです」と松田助教は説明する。データをチューニング都市が抱えるさまざまな課題に対応する方策として、IoT(モノのインターネット)など情報通信の最新技術により、エネルギーの使用や交通の状況などインフラを最適に管理するスマートシティ構想が打ち出されている。その中で、環境関連のデータを活用した安心安全で快適な暮らしのための情報提供サービスは、住みやすい街づくりの重要な課題だ。情報科学領域の松田裕貴助教は、情報を求める人の知覚や心理状態までくみ取って環境データを解析し、目的を先読みする形でガイドするシステムを研究している。そこで、市民や訪問者から情報を集める「参加型センシング」の方法を発展させて、それぞれの場所での視覚、聴覚、嗅覚など、知覚した情報をスマートフォン等で入力してもらい、集積したデータでセンサデータを調整する「知覚模倣モデル」を構築する手法を検討している。この際、データを積極的に入力してもらうよう促しつつ、かつデータの質を高めるための仕組みも取り入れる。「このモデルにより、センサで測定されるデータをチューニング(調整)することで、人の知覚に近いデータが推定できます。市民に寄り添ったサービスが提供可能になるでしょう」と松田助教。期待される応用範囲は幅広く、道案内の場合、通常のアプリは目的地までの最短距離を示すケースが多いが、道端の照明の明るさだけでなく、周囲の状況を加味することで、夜間の安心安全なルートが探し当てられる。新型コロナウイルスの感染対策の観点からは、「3密」状態を避けつつも安心して外出できるような場所・時間・移動方法を提案できる。さらに、観光では「どんな光景が感性に合うか」という個人の希望に沿ったスポットを紹介できる。09 S E NTAN