ブックタイトルSENTAN せんたん MAY 2021 vol.30

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概要

SENTAN せんたん MAY 2021 vol.30

3研究科を統合して全学が一つの研究科になってから3年が経ち、新体制が軌道に乗りつつあります。そのような時期に、共創という言葉を掲げて意識を高めることにより、全学で力を結集することができるようになるのではないか、と考えています。―現在、10年先の2030年を見通した本学の長期ビジョンを策定されていますが、どのような将来像を描いておられますか。長期ビジョンのテーマは「先端科学技術で未来を共創する大学」です。4つの柱を考えていて、まず、最先端の研究の中で将来のリーダー人材を育成する大学院大学特有のミッションをどのように展開するか。次いで、実際に共創を進めるための環境としてキャンパスコミュニティを充実させ、構成員にそれを意識してもらうことです。3つ目が、共創の輪を学外、さらにグローバルに拡大していくこと。そして、4つ目が、共創の基盤となる大学運営、経営の仕組みを、デジタル化も含めて整備していくことです。キャンパスコミュニティという観点では、日本の大学は学内のコミュニケーションがあまり活発ではなく、教職員も学生も、学内で起きていることについて情報入手の手段が少ない。そこで、学内広報の強化を重視します。グローバル化については、コロナ禍により普及したオンライン会議システムを活用し、海外の連携大学の表敬訪問などの交流や留学生の受け入れに向けての活動を行うことにより、途絶えている教員・学生の海外派遣を補う計画を立てています。―新たな大学づくりの拠点となる施設の一つとして、地球環境を守り、持続可能な社会の実現に向けて3領域が連係して研究する「デジタルグリーンイノベーションセンター」が1月に設立されましたが、どのような研究の取り組みを望んでおられますか。伝統的にこれまでの大学では、学問分野別に教育研究体制が組まれていましたが、今回のセンターではまず、社会的・世界的課題を掲げたうえで、それを解決するという目的に適う分野が融合し、共創によって取り組むという特徴があります。センターの陣容は順調に整いつつあり、従来とは異なる大学の研究の方向性を提示できると期待しています。このような課題解決型の研究は、大学の社会貢献という点で、非常にアピール力がありますし、社会の求める課題解決を目指すことから、多様な外部資金の獲得も可能になるでしょう。加えて、研究に参加する学生にとっても研究の目標が非常に理解しやすいという面もあります。したがって、このセンターを皮切りに、異なった課題を掲げる研究体制を今後、さらに展開できるのではないか、と考えています。また、本学は、先端科学に特化した理系の大学院大学ですが、具体的な社会課題に取り組むには、経済学、国際関係など社会科学の観点からの知識・研究も必要です。そこで、以前から教育研究連携を続けていた国際基督教大学の社会科学系の教員に参加していただき、本学初の文理融合のバイオエコノミー部門を新センターに設け、研究の枠組みをさらに広げる予定です。―これからの教育、人材育成についての方針については。時代と共に社会が大学院の修了生に期待するものは変わってきています。もちろん、自分の興味がある分野の研究を究めることは、以前と変わらず大切です。一方で、広い視野を持って全体像を俯瞰する能力や、他の研究者とコミュニケーションをとりながら相手の価値観を理解して共同研究で大きな成果をあげる能力なども求められるようになってきており、そのような能力の育成は本学の大学院教育においても重要な課題です。本学は、学部がなく、様々な大学・高等専門学校から入学した学生や社会人、留学生が共に研究するので、このような多面的なスキル、およびコミュニケーション能力の育成には優れた環境だと思います。回り道で幅広い知見を得ることも大切塩﨑新学長は、細胞内の情報伝達の仕組みを酵母で調べ、がんや糖尿病の発症に関係するタンパク質の機能や構造を明らかにしてきた。幼少のころ、誕生日プレゼントにもらった顕微鏡で、アイスクリームを見て乳脂肪の粒の輝きに魅せられたことが、科学に興味を持つきっかけになった。その後、京都大学理学部に入学し、柳田充弘教授(現沖縄科学技術大学院大学教授)の研究室で、当時、急速に解明されはじめた分子レベルの細胞生物学の研究に取り組んだ。「米国で授業を行うために、研究テーマ以外の知識も身に付けたことが、後の研究に役立ちました。ひとつのテーマに集中するだけでなく、少し回り道をすることも大切」と研究の秘訣を披露する。日頃からワークアウトやジョギングで「仕事をするための体づくり」を心がけている。S E NTAN02