ブックタイトルSENTAN せんたん SEP 2021 vol.30
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SENTAN せんたん SEP 2021 vol.30
パネルディスカッションスマートコミュニティで変わる私たちの街と暮らし藤沢氏スマートコミュニティの中で生駒市、奈良先端大は何ができるのか、市民はどのように行動したらいいかについて議論していきます。小紫氏高齢化が進む生駒市は、特に1人暮らしの高齢者が増加すると推計されています。そこで、求めに応じて病院などへの移動を支援する配車システム、高齢者の様子をIoTセンサにより遠隔から終始見守るなどICT(情報通信技術)を活用する必要があると思っています。また、テレワークなど新しい働き方の採用、現役世代のコミュニティ参加など街づくりの視点を含めたDXの整備が大切と思っています。松田氏スマートシティを支える「街のAI」は、生活の利便性を向上しますが、それに加えて重要な安心、安全、快適さを増すための研究をしています。街のAIに、街にいる人々が自身の感じた情報を提供する。この結果、AIは様々な街の状況を人がどのように体感するのかを学習し、伝えることができます。畑氏奈良先端大の中で予約なし乗り捨て可能な電気自動車(EV)のカーシェアリングの実験をしています。車の需要の状況を可視化し、オークションして決め、好ましい返却行動には報酬を与えます。「利他的なグループは利己的なグループを打ち負かす」という言葉に基づいた研究方針で、活発に利用されています。田口氏鹿ノ台自治連合会は、人口の22%が75歳以上です。思いやりの心があるスマートコミュニティをめざし、みんな元気でフレイルになっても安心な街が課題です。オンデマンドの機能を持つ配車アプリでの送迎などを行っています。鷲見氏実業家ですが、自治体の政策アドバイザーとしても活動しており、企業などとマッチングした政策をつくり、幸福な街づくりに参画したいと思っています。生駒市とは5月に、保育用品を販売する企業と子育てし易いまちの実現に向けた連携の締結に関わりました。官民連携アクセラレータ(加速させる人)としてスマートシティなどでの社会活動を推進したいです。藤沢氏スマートコミュ二ティづくりを実践している徳田先生の経験から、課題を教えてください。徳田氏われわれは神奈川県藤沢市のゴミ収集の問題を解決するシステムを作りました。これまで市民から未回収などの連絡を受け、手作業で場所を確認するなどしていましたが、収集作業員のスマホのアプリと収集車につけたセンサにより、未回収のゴミなど現場の状況を報告した結果を共有し一覧表示することで、的確かつ迅速な対応が可能になりました。生駒市は、奈良先端大の最先端技術と融合した形の新しいサービスを開発されているので、さらに実情に沿った開発をし、市民が積極的に参加してもらうことが重要です。自治体、大学、市民の3者が調和することによってDXが加速されると思います。藤沢氏大学はどのように関わっていきますか。松田氏研究成果を社会実装していくが、いきなり完璧なサービスを提供するのは難しい。「みんなで育てていこう」という気持ちで受け入れていただければありがたい。畑氏大学がシステムを導入した後は、むしろ実際に運用する市民のみなさんが中心になり、大学は知を提供するという形になるでしょう。藤沢氏官民連携も進んでいますね。鷲見氏自治体と企業が連携した実証実験は、最近では失敗事例を嫌がるのではなく、そこから成功を学ぶという風土ができてきた。自治体と組みたいという企業が増えており、社会問題を解決できるところまで、一緒になって行政がサポートしていただける環境があればありがたい。さらに地域住民が動いていただけると素晴らしい結果になると思います。小紫氏私はよく「実証実験の場に生駒市を」という言い方をしています。市民の生命・財産を傷つけたり、個人情報が洩れる場合は論外ですが、仮に少し失敗しても、他で取り戻すことができ、市民にマイナスにならない限り挑戦を受け入れる姿勢です。藤沢氏今後、デジタル化を進める時の課題、技術面のアイデアは。田口氏文書の回覧をデジタル化することで多くの人が見られ、情報格差が少なくできることがスタートのきっかけです。アンケート調査や自治会の決議なども簡潔に済ませられます。ゴミ収集や避難の助け合いなどもデジタル化の一環としてとらえていきたい。畑氏参加してもらうことが大切なので、わかりやすく、使うほどに良くなるようなアプリの開発でしょう。松田氏一見、慣れ親しんだアナログな物に、実はデジタルが組み込まれているといった形を作ったりすることで、自然と情報にアクセスしやすくなると思います。徳田氏サービス提供者側が情報を一方的に発信するのではなく、受け手が納得して読んでくれるタイミングを図って発信することによってコミュニケーション効果を上げる、という研究も重要です。藤沢氏デジタル化により私たち市民が関わって社会を変えていくことが大切。そのための大学の知恵、オープンな自治体、企業ネットワークもそろっていることがわかりました。本学助教松田裕貴氏信州大学准教授・本学客員准教授畑秀明氏㈱官民連携事業研究所代表取締役社長鷲見英利氏鹿ノ台自治連合会会長田口信義氏閉会挨拶奈良先端大学長/塩﨑一裕氏今回のシンポジウムでは、市民と大学の連携がもたらす将来像の一つとしてスマートシティをテーマに取り上げましたが、その開発や発展は私たちの日常生活の中で着実に進行していることを実感しました。最近の世界的な潮流の一つにオープンサイエンスがあります。インターネットにより最先端の研究成果に誰もがアクセスできるようになり、市民が大学のプロジェクトに参画するなど新しい研究の姿が生まれています。スマートシティのような次世代の社会を構築していくには、多様なメンバーのチームワークが不可欠であり、「地域コミュニティと一体化した大学」が未来の大学像と考えるわけです。先ごろ、全国の国立大学法人の過去4年間の実績評価が文部科学省から発表され、奈良先端大は研究・教育共に最高評価を受けました。86の国立大学の中、両方で最高評価を受けたのは2大学のみであり、トップレベルの実力を持つ本学に今後も注目していただきたい。本学学長塩﨑一裕氏S E NTAN14