ブックタイトルSENTAN せんたん SEP 2021 vol.30
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SENTAN せんたん SEP 2021 vol.30
のキャンパスの面積が広いことからも、他大学に比べて深刻な状況に至っていません。それだけに、新型コロナウイルス禍の現状を客観的に見据え、このような事態を想定した教育環境の整備や教育体制そのものの見直しを進めていくことができるでしょう。オンラインで教育研究を行う体制を拡充し、留学生が自国に居たままインターシップができたり、通学が困難な学生や社会人の教育のために活用したりとさまざまな試みが考えられます。雑誌などにも紹介されないという面があるとはいえ、知名度を上げることが先決です。新たに広報担当の特任教授が赴任したこともあり、iPS細胞を作製した山中伸弥栄誉教授の記念ランニングロードの創設など、話題を呼ぶ企画が相次いで生まれており、広報活動の継続が必要です。研究者も研究成果がマスメディアに取り上げられるような工夫をして、大学の実力を示してもらえればと思います。公開講座などの市民交流の場も拡充していくことが大切です。少子化への対応―少子化の中での大学院生の確保、教育の充実の問題がありますね。現段階では、文部科学省から教育、研究ともトップクラスの評価をもらっています。教育面で、このレベルを維持するためには、少子化の中で入学希望者の人数をキープし、優秀な人材を集める体制づくりが欠かせません。例えば、工学部がある大学で6年制教育ができるようになり、高校と大学の教育を連携する「高大接続」といった教育改革により、学部を持つ大学から、本学のような他の大学院を志望する学生が減少するかもしれません。いずれの大学院も同様の課題を抱えていますが、本学なりの学生確保の道筋を作らなければなりません。そのひとつとして、融合領域の教育研究の在り方を示す全国でも稀な「データ駆動型サイエンス創造センター」「デジタルグリーンイノベーションセンター」の設置など、入学希望者にとって魅力ある大学であることをアピールする方法があります。知名度の向上―そのための広報の役割は。3月の調査リポートでは、一般人の本学に対する知名度がかなり低かった。本学は、高校生が直接受験できない大学院大学であり、専門分野が限定されているので、受験地域連携を推進―4月に発足した地域共創推進室も担当されていますね。地域連携の一環で、自治体、金融機関、企業などと話を進めていますが、それぞれ課題を抱えていて、現状を変えようという意識が強く感じられます。例えば、奈良県内には、高齢化率が全国平均を大きく上回る自治体があります。そこで本学と連携し、生活や健康などライフサイエンスの面から支援対策のプランを構築することができれば、その成果を地域から全国へ発信できる可能性があります。モノづくりの面で奈良県内の企業やけいはんな学研都市関連の企業との共同研究の話し合いも積極的に取り組んでいきます。産学連携に対する研究者の意識を高めるとともに、複数の企業、ベンチャーが共にイノベーションに向かって取り組むコンソーシアム(共同事業体)の形成なども考えていきたいです。―情報管理、情報システムについては。大学の事務作業などが軽減するデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革、DX)に取り組まなければなりません。新型コロナウイルス禍では事務処理に忙殺されましたが、少しでも余裕ができれば、次の施策が考えられる。教育のデジタル化も進めます。現場からの提案を重視し、よりよい導入システムを考えていきたい。既成概念にとらわれない発想を―新たな発展をめざす本学の学生に望むことは。電子技術総合研究所(産業技術総合研究所、茨城県つくば市)から1998年に本学の教授として赴任しました。当初は大学院大学は、つくばと同じ研究所の性格があるという認識でした。さらに、毎年、大学院生が入学することにより、日々新たなテーマを探求し教育研究するという、私にとっての理想郷であることに気づきました。理事となったため、教授職は退任しましたが、改めて人材を育てる教育の重要性を感じています。学生に対しては、やりたいと思ったテーマは突き詰める。そのための大学としてのサポートは惜しみません。既成概念にとらわれない挑戦的な発想を大事にしてほしいと思います。S E NTAN02