ブックタイトルSENTAN せんたん SEP 2018 vol.27
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SENTAN せんたん SEP 2018 vol.27
NAIST OB・OGに聞く金谷一朗Ichiroh Kanaya金澤麻由子メディアアート制作の様子(井村先生と共に)エジプトでの世界遺産調査の様子(安室先生と共に)写真提供: Abusir 3D Survey長崎県立大学シーボルト校情報システム学部教授Profile : 1999年度博士後期課程修(情報科学研究科像情報処理学講座)N世AIST界遺産調の査仲な間どとの少活し動のが無続茶けぶらりれのおるかのげは、私はいま、長崎とエジプト・ギザという二つの世界遺産の街を往復する生活を送っています。いったい何故、情報科学研究科出身の私が世界遺産の研究をするようになったのでしょうか。それはNAISTの恩師であった千原先生が就職活動中の私にかけた「お前そんなことよりカンボジアに行ってこいや」の一言から始まります。派遣されたのは日本政府のアンコール遺跡保護プロジェクトだったのですが、行き先も不明、宿泊先も不明。ただ「何月何日の日の出の時刻にアンコールワットの南大門の前に立っておけ」というだけの「無茶振り」でした。とりあえず往復の航空券だけ購入してカンボジアに向かった私は、無事プロジェクトメンバーと合流し、遺跡の三次元形状のデジタル化に協力しました。カンボジアでの調査は、それまで未来のテクノロジーにしか興味のなかった自分自身の蒙(もう)を啓(ひら)くものでした。テクノロジーは何のためにあるのか。それは人類を豊かにし、文化を作り出すためにあるのです。人間とテクノロジーの関係を抜きにして、テクノロジーの研究は成立しません。それに気づかせてくれたのが、クメール王朝が残した高度な遺跡だったのです。そしてもうひとつ、カンボジアで得たものがあります。そもそも世界遺産とは、自然環境や政治的、経済的理由で自国での保護が難しい遺産を国連が指定する制度でした。アンコール遺跡もそのような例に漏れず、なかなかの環境にあったのです。簡単に言うと、何度か死にかけたわけです。それ故、もしこの環境で倒れずに日本へ帰れたら、きっと世界遺産の調査は自分の天命なのだろうと思うことにしました。それから約20年がたつわけですが、今も数多くの世界遺産調査・保護プロジェクトに関わらせて頂いています。とりわけNAISTの同期であった関西大学教授の安室喜弘先生とは今でも一緒にエジプト調査をさせていただいている仲です。彼は私の親友にして良き批判者という得難い存在です。それだけではありません。テクノロジーは文化を創造するためにあるという信念のもと、私はアート活動や社会活動にも力を入れることになりました。NAISTの後輩でもある関西学院大学教授の井村誠孝先生とは、作家金澤麻由子さんとともにいくつものメディアアート作品を作らせていただきました。またNAISTの先輩である京都大学教授の黒田知宏先生とは、米国TEDカンファレンスの地域版であるTEDxKyotoや医学会総会の運営を一緒に進めさせていただきました。長崎とエジプトを拠点に、情報科学研究、世界遺産調査、そしてアート活動、社会活動を行えているのは、NAISTの仲間と、そして少しばかりの「無茶振り」があってこそのことです。世界遺産の街、奈良に最先端のテクノロジーの研究教育機関であるNAISTが存在すること、そして自分自身がその卒業生であることを、私は誇りに思っています。1 5 S E NTAN