研究成果 2009/02/24
コメがいつ実り、収穫できるかは、花の咲く時期によって決まります。世界各地で栽培されているイネは、ぞれぞれの栽培地域の環境に適応して、都合のよい時期に花を咲かせているが、そのメカニズムについては大きな謎でした。奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科の島本功教授と同研究科 博士後期課程3年の高橋靖幸は、世界各地のイネ64品種を調べた結果、花を咲かせる植物ホルモンである花成ホルモン(フロリゲン)について、その生産量が多ければ早く咲くなどイネの品種によって異なることが、花の咲く時期の変化をもたらす主な原因であることを世界で初めてつきとめました。
さらにこの花成ホルモンの量の差異が起きる原因は、主にイネのHd1と呼ばれる特定の遺伝子の変異に関係していました。この遺伝子によって作り出されるタンパク質が別の遺伝子にフロリゲンをつくらせるというメカニズムの中で、そのタンパク質の働き(活性)に大きく影響するような形での変異が集中していることを明らかにしました。
イネの花を栽培環境に適応してちょうどいい時期に咲かせれば、コメの品質を向上させ、増収にもつながります。今回、同定されたHd1遺伝子の変異は自然界の中で繰り返されて修得したもので、これを積極的に品種改良に利用すれば、コメの収穫時期のコントロールを可能にすることなどが期待されます。また、栽培の過程で自然に得られた遺伝子の変異であることから、イネの進化の歴史を解明する手がかりにもなります。
この研究成果は、平成21年2月24日(火)にアメリカ科学アカデミー紀要(Proceedings of National Academy of Science, U. S. A.)電子版に掲載されます。
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