NAIST在籍中の研究成果が認められ 山中伸弥教授がラスカー賞を受賞(2009/10/2)

受賞 2009/10/28

 医学分野で画期的な業績をあげた研究者に贈られる米国の2009年度のアルバート・ラスカー医学研究賞に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を世界で初めて作製した山中伸弥京都大学教授が選ばれました。受賞内容は「細胞核の初期化」に関する研究で、この研究分野の父ともいわれる英国のJ.B. Gurdon博士との共同受賞であり、この10月2日にニューヨークで授賞式がありました。

 ラスカー賞は、米国で最も権威がある医学賞で、山中先生が受賞された基礎医学研究賞では、受賞者の約半数が後にノーベル生理学・医学賞を受賞していることでも有名です。

  山中先生は、1999年に本学の遺伝子教育研究センター動物分子工学部門の助教授として赴任され、新しい研究テーマとして「ES細胞(胚性幹細胞)の多能性・増殖性を維持するために必要な遺伝子の研究」を旗印に掲げ、学生や教職員と共に研究を開始されました。その過程でES細胞特異的に発現している遺伝子をEST(発現遺伝子標識)データベースから抽出し、それらの遺伝子をECAT(ES cell Associated Transcript、ES細胞関連転写因子)と命名したうえで、個々の遺伝子機能の解析を行いました。その中から、体細胞の初期化にかかわる重要な遺伝子として見出したのが、Nanog, ERasと名付けた遺伝子だったのです。成果は2003年にNature誌、Cell誌の科学誌2誌に掲載されて世界の注目を集めました。

 この後も着実に研究を進められ、山中先生が目指しておられた、受精卵以外の正常な細胞からES細胞と同等な機能をもつ細胞を作製するという夢のような話を、現実のものにしていかれたご努力には、ただただ驚かされると同時に畏敬の念まで覚えます。また、これらの研究に、本学の学生、教員や技術職員であった人達が中心的な役割を果たしている(またこれからも果たしていく)ことは、本学の誇りといえるでしょう。

 バイオサイエンス研究科では、山中先生の業績に対し、2003年にNAIST学術賞を、また、当時本学学生であった高橋和利さん(現在、京都大学山中研究室助教)には博士前期課程、後期課程の2回に渡りNAIST賞を贈り、その研究教育実績を高く評価しています。

 山中先生は、2004年に京都大学再生医科学研究所に移られたのですが、その後も奈良先端大所属の学生を指導しておられたこと、また、本学でもマウスを用いた研究を続けていたことから、遺伝子教育研究センター教授を兼任、2005年4月から2007年3月までの2年間は、バイオサイエンス研究科客員教授として勤務されました。その間、2006年に山中、高橋氏による山中ファクターと呼ばれる「4遺伝子導入によるiPS細胞作製」をCell誌へ発表し、世界中の研究者を驚かせました。

 研究開始からわずか10年足らずで(実質的には7年程度で)このような素晴らしい研究に発展していく様を目の当たりにし、驚嘆するとともに、この研究が本学から始まったこと、また、本研究に携わった本学の学生や職員であった方々がその後素晴らしい活躍をされていることを誇りに思います。

 山中先生、ラスカー賞受賞、本当におめでとうございます。今後も健康に留意され、世界の最先端を駆け続けて下さい。

  文責:バイオサイエンス研究科 教授 河野 憲二

2009年10月2日 ラスカー賞授賞式の山中教授
2009年10月2日 ラスカー賞授賞式の山中教授

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