[プレスリリース]情報科学研究科の中村健介特任准教授らの研究グループが次世代DNA解析の精度向上につながる改善点を解明(2011/06/08)

研究成果 2011/06/09

次世代シーケンサ(DNA塩基配列解読装置)の急速な進歩により、ゲノムDNA配列の決定量が膨大になりまし た。例えば、現在の最高性能のゲノムアナライザでは、約百塩基長の配列が一度に数千万本得られ、その大量な情報の処理が必要とされています。このような シーケンサは主に欧米の3社で製造され、得られた大量情報にもとづき決定されたゲノムの塩基配列データの信頼性をいかに評価するかということが、バイオイ ンフォマティクス(生物情報科学)分野の緊急課題になっています。中でもシーケンサの機種によって特定の配列が誤まって読み取られてしまうという装置の癖 に注目し、決定された配列の信頼性を評価し、精度を上げるための技術開発はこれまでにありませんでした。

こうしたなかで、本学情報科学研 究科計算システムズ生物学研究室の中村建介特任准教授と金谷重彦教授らは、世界の研究機関でもっともよく使われている次世代シーケンサ(米国イルミナ社 製)について、この装置が読み取ったデータは特定の配列パターンに隣接した領域を読み取る際に極めて高い確率で誤った塩基と判定してしまうことを明らかに しました。

次世代シーケンサーの重要な応用例としては、ヒトの個体差を識別して薬の副作用などを評価するいわゆるSNPs解析が挙げられ ますが、これまで、イルミナシーケンサーによるデータだけではSNP変異を断定できないと言われていました。今回我々が特定した情報にもとづき、DNA塩 基の変位箇所の詳しい解析を行うことで、他の実験技術による確認をしなくとも、高い信頼性で変位の存在を特定出来るようになることが期待されます。さらに は、ゲノム配列の知られていない生物種の解析においても、我々の特定した情報に基づいて塩基決定アルゴリズム(処理手順)の改善を進めることで、シーケン サの高い性能を最大限に引き出して、ゲノム決定が行える可能性もあります。以上のように、医療を含めた生物学分野における遺伝子情報の解析研究の促進に大 きく貢献することが期待されます。

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