研究成果 2011/07/28
魚やマウス、ヒトなどのせきつい動物の背骨は、曲がりやすいように、多くの骨(せきつい骨)が積み重なった分節 構造を形づくっています。その構造ができる仕組みについては、発生の過程で体内の"生物時計"が刻む約2時間の周期に応じて、せきつい骨のもとになる細胞 群が順々に区切られることはわかっていましたが、この生物時計の正確な周期を調節する仕組みは謎でした。
本学バイオサイエンス研究科の別所康全教授の研究グループと作村諭一特任准教授の研究グループは、実験生物学的手法と数理生物学的手法を組み合わせて、生物時計の周期を調節する巧妙な仕組みを明らかにすることに成功しました。
こ の生物時計は特定の遺伝子群がONになったりOFFになったりすることを繰り返す(振動する)ことで約2時間の周期を刻んでいます。せきつい骨のもとにな る細胞は、細胞外からの刺激をノッチシグナルという情報伝達系を介して感知していますが、マウスを使った実験で、約2時間の周期はノッチシグナルの強弱を 利用して、数分の単位で微調整されていること解明されました。別所教授らは、これまでの研究成果である生物時計の分子メカニズムをもとに数式モデルをつく りシミュレーションを行ったところ、実験結果と一致する結果が得られました。こうしたことから生物時計の周期調節はノッチシグナルが担っていることが証明 されました。
また、せきつい骨の数は動物種によって決まっています。この生物時計は発生の過程の決められた時期にのみ働くので、生物時計 の周期がせきつい骨の数を規定する要因の一つと考えられています。この発見により動物種特異的なせきつい骨の数を説明できる可能性があると同時に、胎児環 境の変化に適応してせきつい骨の数を一定に保つメカニズムの解明が期待できます。
この成果はモレキュラーバイオロジー・オブ・ザ・セル誌に平成23年7月27日付け速報版に発表されました。