平成24年度 入学式を挙行(2012/04/05)

イベント報告 2012/04/12

4月5日(木)、ミレニアムホールにおいて平成24年度入学式を挙行しました。

本学では、国内外を問わず、また出身大学での専攻にとらわ れず、高い基礎学力をもった学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の研究分野に対する強い興味と意欲をもっ た者の入学を積極的に進めており、このたび、431名の新入生を本学に迎えました。

当日は、尾池 財団法人国際高等研究所所長、中山 奈良県地域振興部長、山下 生駒市長、小山 公益財団法人奈良先端科学技術大学院大学支援財団専務理事、門田 奈良先端科学技術大学院大学同窓会会長を来賓に迎え、また本学入学式では恒例となった茂山家による狂言演能(大蔵流狂言『酢薑(すはじかみ)』)を行い、 奈良の伝統芸能で盛大に新入生の門出を祝いました。

【入学者数】
(博士前期課程)
  情報科学研究科     133名(うち外国人留学生12名)
  バイオサイエンス研究科 125名(うち外国人留学生 1名)
  物質創成科学研究科   107名(うち外国人留学生 4名)
            計 365名

(博士後期課程)
  情報科学研究科      29名(うち外国人留学生10名)
  バイオサイエンス研究科  19名(うち外国人留学生 2名)
  物質創成科学研究科    18名(うち外国人留学生 3名)
             計  66名

            総計 431名(うち留学生32名)




【磯貝学長式辞】

本 日、奈良先端科学技術大学院大学に入学された博士前期課程365名、博士後期課程66名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本学の教職員を代表 して心からお喜びを申し上げます。また、今日の新入学生の中には32名の海外からの学生諸君が含まれています。母国を離れてこの日本で学ぶことを決意され た皆さんに、深く敬意を表したいと思います。

ここで改めて本学の設立の趣旨と目的および本学の理念、また本学のこれまでの歴史について紹介しておきたいと思います。

本 学が立地するこの生駒市高山地区は、国の政策として作られた関西文化学術研究都市、通称「けいはんな学研都市」の一部に当たります。本学は、このけいはん な学研都市の目玉の教育研究拠点として計画され、学部を持たない独立した大学院大学として、1991年に設置されました。本学は「先端科学技術分野に係わ る高度な研究の推進」、「国際社会で指導的な役割を果たす研究者の育成」、「社会・経済を支える高度な専門性を持った人材の養成」、「社会の発展や文化の 創造に向けた学外との密接な連携・協力の推進」を理念として掲げ、自らを日本の高等教育システムにおける実験的な大学であると位置づけて、これまで20年 間、教育研究活動を展開してきました。そして、この間優れた研究成果を発信するとともに、組織的な大学院教育システムのモデルとなるような教育体系を模索 し続け、その中で5,000名を超える修士課程修了者、1,000名を超える博士課程修了者を送り出してきました。こうした本学の諸活動については、客観 的な数値指標でも、また文部科学省による審査においても極めて高く評価されており、日本の中での優れた大学院大学としての認知度は高まっております。私は 今、学長として皆さんは良い大学を選ばれた、本学は皆さんの期待に応えられる大学である、と自信を持って言うことが出来ます。


さ て、皆さんが活躍される21世紀はどんな世紀になるのでしょうか。国連人口基金は昨年10月26日、2011年の世界人口白書を発表し、世界人口は10月 31日に70億人に達し、2050年には93 億人になり、21世紀末には100億人を超えると見込まれると報告しております。また人口分布を地域別に見るとアジアが42億人で最も多く、世界の60% を占めること、またアフリカの人口は現在の10億人が2100年には36億人に達すると予測しております。こうした世界の状況を見た時、食糧問題、環境問 題、エネルギー問題、あるいは水の問題や健康問題など様々な問題が生じていくことは必至であります。

一方、昨年日本の政府は第4期科学技 術基本計画を閣議決定しましたが、その中では震災からの復興に加えて、グリーンイノベーションやライフイノベーションを大きな課題として採り上げ、大学が こうした課題に対して基礎的な研究や人材育成という面で貢献していくことを期待しています。

これまで長い間我が国の高等教育、大学院教育 は、何処かに追いつくことが目標であり続けました。しかし、今日本が育てていかなければいけない人材は、モデルのない世界で自ら考え、世界で活躍できる人 材であります。本学ではこうした視点に立って大学の国際化を図り、海外との交流を積極的に進め、毎年、全学生数の約4分の1が海外に出る機会も作ってきま した。また、留学生の受け入れも増やしてきており、今、留学生数は全学生の10%以上となっています。私は、皆さんには国際化という言葉の意味として、こ れからの世界を作っていくアジアやアフリカ地域への理解を深め、そうした地域への科学技術からの貢献ということを、是非考えて欲しいのです。本学で学ぶ留 学生の多くはアジア地域からの留学生であります。日本人学生の諸君には留学生諸君と、また留学生諸君は日本人学生と交流を深め、お互いの理解を深めて下さ い。そうした経験の中で、皆さんがこれから取り組むべきこともきっと見つかってくるはずです。本学の人材育成の目標に掲げられているように、皆さんには是 非、将来日本やアジアや世界を支える科学者として活躍して欲しいと思っています。


皆さんがこうした科学者や科学技術者を目指す時 大切なのは、自ら学ぶ心、自ら育つ心であります。教育とは教えること、育てること、つまり大学や教員からの働きかけの作業であると思うかもしれませんが、 実は教えると学ぶ、育てると育つが一体となる、つまり教員と学生の相互の努力が無ければ成立しない活動なのです。本学で皆さんには自ら学び、真の意味の学 力を身につけて、自ら科学者に育って欲しいのです。学力とは記憶した知識の量ではなく、その知識を活用して問題を発見し、それを解決する能力であります。 こうした学力をつける中で、皆さんには、「科学の作法」をも学んで欲しいと思っています。科学の作法とは科学するものとしての心得で、知識体系や技術体系 だけでなく、その元になる考え方や発想、あるいは科学者としての倫理、また、言葉では伝えられないものなどを含んだ総合的なものです。それは科学者に成る ためには必須のものであります。

さらに皆さんが世界で活躍するためには、人間力や感性、判断力も必要となります。それは人としての智恵と も言えるでしょう。その意味では、文化的あるいは文系的な事柄にも興味を持ち、人や人の営みというものに興味を持つことも大事です。実は、奈良はそうした ことを学ぶのに大変適した所であります。時には実験室から自分を解放して、季節季節には奈良の各地を訪れ、日本の文化とその歴史を味わって下さい。これは 皆さんが奈良に来た特権でもあります。皆さんがこのホールに入って来た時、ロビーに飾ってある大きな松明に気が付いたでしょう。あれは、奈良の東大寺二月 堂で毎年3月に行われるお水取りの時に使われる籠松明と呼ばれるものです。東大寺ではこの修二会という行を1200年も前から続けて行って来ました。文化 というものがどう伝えられていくのかを示す見事な見本です。そんなことも考えながら、奈良で時にはゆったりした時間を過ごして欲しいのです。それは皆さん が先端科学技術を学び研究するエネルギーを補充することにもなるでしょう。こうした学ぶという営みによって、皆さん自身が変わっていくことを自分自身で見 ること、それが教育というものの本質であろうと思います。


さて、昨年3月11日の東日本大震災は未だに多くの傷跡を残しており、 復興への道はまだまだ遠いものがありますが、その復興への努力や協力は日本の国全体の問題として捉えていくことが必要であろうと改めて感じています。あの 震災と津波から私たちが教わったことは、自然の世界には人間がまだまだ制御できないことがあるということでしょう。また、今回の地震と津波によって発生し た福島原発事故は、人災であると言われる中、科学技術のこれからに多くの問題を投げ掛けております。こうした状況を見て、皆さんはそれぞれ大震災を自分の こととして自らがこれからどう生きていくべきかを考えさせられたのではないでしょうか。そうした経験は皆さんを成長させるはずです。これからの科学がその 本来のものである「科学のための科学」と共に科学の有用性を活用するための「社会のための科学」として期待されることが強くなる中で、皆さんの社会的な責 任は重くなっていくでしょう。皆さんにはその期待に応えてほしいと思います。


最後に、皆さんには心身共に健康で楽しい学生生活を 送って欲しいと思っています。特に心の健康は、大事なことであります。毎年12月に発表される今年の漢字では、昨年は災いの年からの心の復興を祈ってで しょう、「絆」という字が選ばれました。人との絆、これが人間の社会性の原点かもしれません。本学で新たな生活を始めるに当たって、皆さんは新たに多くの 人と知り合いになるはずです。そうした出会いは偶然、ある種の縁、えにしであるのかもしれません、しかし、そうした出会いを意味あるものとして継続し、絆 というネットワークに広げていくのは皆さん自身の意志によるものです。そしてその絆はきっと皆さんの心の健康を支え、これからの人生を支える一生の財産に なるはずです。改めて皆さんの意義ある学生生活とその未来に期待して式辞とします。

入学おめでとう。

奈良先端科学技術大学院大学学長 磯貝 彰

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