平成24年度 学位記授与式を挙行(2012/9/25)

イベント報告 2012/10/02

9月25日(火)、先端科学技術研究推進センター研修ホールにおいて学位記授与式を挙行しました。

14名の修了生に対して、磯貝学長から出席者一人ひとりに学位記を手渡し、門出を祝して、式辞を述べました。

式終了後には記念撮影も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合っていました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】
情報科学研究科 4名
バイオサイエンス研究科 2名
 計 6名

【博士後期課程修了者】
情報科学研究科 5名
バイオサイエンス研究科 2名
計 7名

【論文提出による博士学位取得者】
博士(バイオサイエンス) 1名

総計 14名


【磯貝学長式辞】
本日、平成24年度第2回の学位記授与式にあたり、修士の学位及び博士の学位を得られた修了生の皆さんに、本学教職員はじめ、全ての構成員を代表してお祝いを申し上げます。

皆 さんはこれまで、本学の博士前期課程及び博士後期課程で勉学するとともに、先端科学技術分野の研究において立派な学位論文を書かれました。本日にいたるま での皆さんの努力に学長として敬意を表したいと思います。また、本日の修了生合計14名のうち、8名が留学生であります。留学生の皆さんには、祖国を離 れ、文化も習慣も違う国で勉学・生活をされ、ここにその目的を達せられたことに、改めて心からのお祝いを申し上げます。


学位を本日授与された皆さんを含めて、本学が開学以来これまでに与えてきた学位の数は、修士5,560名、課程博士1,056名、論文博士40名であります。みなさんは、これから本学修了生の一員として、世界で活躍していくことが期待されています。

本日は、留学生の修了生が多いこともあって、まず初めに本学の国際化の話をしたいと思います。

本 学は、1993年に初めて修士課程学生を受け入れてから本年で20年になりますが、この間、留学生の数は、1990年代後半では30名程度、2000年代 前半では50名前後で推移してきました。しかし、2008年からその数が急速に増え、現在140名の留学生が在籍しております。そしてその数は全学生の 10%を超え、博士課程だけで見ると20%を超えます。それは、本学が優れた大学としての地位を日本の中で確立した次のステップとして、世界に通用する大 学になろうという目標の下、積極的に本学の国際化へ向けて努力してきた結果であります。これまでに学位を得た留学生の数は皆さんを含め、修士135名、博 士113名となっています。それらの方々の中には、母国に戻られ大学の教授になっている方々もおられます。


今、経済の世界だけで なく、教育の世界でもグローバル化という言葉がよく使われます。一方、長い間、国際化という言葉も使われてきました。この2つの言葉は、少し意味が違うの だろうと思います。グローバル化というのは、おそらく世界標準ということだろうと思います。世界で評価される研究成果を出す、また、世界で通用する人材を 育成する、それが研究や教育のグローバル化といわれるものでしょう。一方、国際化というのは、それぞれの国や地域の特性を理解する、つまりローカルな世界 ということではないかと思っています。グローバル人材といっても、実際には、それぞれの地域や国の中で仕事をするわけで、そこには国際人としての国際的な センスや視野も必要となってくるのです。ある意味ではグローバル化という視点が文明であるとすれば、国際化というのは文化の問題なのです。学生諸君が世界 にはいろいろな文化があることを知り、これからの国際社会の中で、自分がどう生きていくのかを考える、それを学ぶ事が教育の国際化というものでしょう。そ うした点で本学の国際化ということを考えてみると、まず、留学生への教育があります。そして留学生が修了後、それぞれの国での中心的な科学技術者として活 躍し、同時に、日本とそれぞれの国との架け橋になる。あるいは、日本国内の国際的産業の中で活躍する。それが第一の目標です。そして次に、日本人学生の国 際化があります。留学生とともに育った日本人学生が国際人として成長し、グローバルに役立つ人材として国内外で活躍する。それが第二の目標です。こうした ことを考えると、同じ世代の学生同士、留学生と日本人学生が緊密な交流をすることが大変重要であるはずです。


留学生の皆さんは、 本学で十分な国際的交流が出来たでしょうか。皆さんには、本学で皆さんが進めてきた学生や教員との交流を今後も続けて欲しいと思っています。そして、それ ぞれの国の中で修了生のネットワークを作って欲しいと思っています。それによって皆さんが同じ大学で学んだという経歴を共有し、今後も助け合う機会を作れ るでしょう。そうしたことが、皆さんが本学で学んだ意義の一つだろうと思っています。また同時に、留学生の皆さんには、日本人学生の国際化のために貢献し ていただいたことについて、学長として感謝します。研究室も随分と国際化してきました。また、日本人学生の国際的センスも、皆さんの存在で相当高くなった ものと思っています。彼らもまた、皆さんとの交流を続け、いつか皆さんの国に行きたいと言ってくれるものと思っています。大学としては、皆さんが本学でさ らなる研修を積まれる機会も作りたいと思っています。


さて、少し話題を変えます。

学位記を得る、すなわち、大学 院を修了したということは、皆さんのキャリアから見てどういうことなのでしょうか。中国の故事に次のようなものがあります。「黄河の上流にある竜門と呼ば れる急流を、多くの魚が登ろうと試みたが、鯉だけが登り切り竜になることができた」というものです。そうしたことから、ある実力者に認められると世の中に 出て活躍できるようになるということを、登竜門(龍門を登る)というようになりました。日本で5月に鯉のぼりという吹き流しをあげるのも、鯉の滝登りを意 味して、子供の将来を祈る親たちの思いが込もった行事なのです。皆さんはある意味、学生という鯉が大学院の課程という竜門を登り切って、修了生という竜に なったばかりであるということができます。それでは、あとは前途洋々で、ゆるやかになった川を流れていけば、皆さんが竜として世の中で活躍できるようにな るのでしょうか。たぶん、そんなことはないでしょう。

最近ある記事で見た言葉に、「知識の半減期」或いは「知識の賞味期限」というものが ありました。これについては学長通信にも書きましたので、その詳細は避けますが、趣旨は「大学で学んできた知識には、それが社会で役に立つ賞味期限や半減 期のようなものがあるようだと言われている。しかし、大学で学ぶべきことは、真実を求め最先端を目指すための方法や、答えのない課題を考え続ける力や持久 力であり、それには半減期など無く、未来永劫役立つものである」というものでした。私は入学式などで、新入生諸君に、本学では科学の作法を学んでほしいと いうことをお願いしてきました。それはこの記事で言っていることと近いことであります。皆さんが本学で学んだことは、単に外にある情報を取り入れ何かを知 るということではなく、知るための方法や知の作法であったはずです。そして、自分で考えて、学び続けことの重要性を学んだはずです。皆さんがそうした努力 によって自分のものとしたものが、真の知識であります。そして、それには賞味期限や半減期はありません。

皆さんは、今、竜門を登って鯉か ら竜になりました。しかし、まだ子供の竜であると言っていいでしょう。これから皆さんが科学者として社会の中で活躍して行く中で、いくつものきびしい場面 に出会うはずです。それらの難関を突破しなければ、雲の上に立つような真の竜になることは出来ません。その困難に立ち向かう時、本学で学んだ、考え続ける 力、学び続ける力がきっと皆さんを助けてくれることと思っています。皆さんが本学で学修した数年間は、こうしたタフな持久力を身に付けるための厳しいト レーニングであったのです。本日、皆さんにお渡しした学位記は、それを完了したという証明書なのです。


みなさんが活躍するこれか らの時代は、環境問題、エネルギー問題、食糧問題など、地球規模での多くの困難な問題が山積しています。そして、日本にとって、また、世界にとって変化の 激しい時代となるでしょう。科学が社会を作り、また社会が科学をつくっていくという、科学と社会の相互作用の強い時代に、科学者の社会的な役割や責任は、 ますます大きくなっていくはずです。皆さんが、「社会を先導し、社会に信頼される科学」を目標に、これから活躍してくれることを祈っています。いつも言っ ているように、皆さんの活躍が本学の存在意義を社会に示し、本学を支援することにつながります。どうか、健康で有意義な人生を送ってください。そして、 時々は本学に来て、皆さんの活躍を聞かせてください。

おめでとう。

平成24年9月25日 奈良先端科学技術大学院大学 学長 磯貝 彰

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