平成26年度 入学式を挙行(2014/04/04)

イベント報告 2014/04/10

4月4日(金)、ミレニアムホールにおいて平成26年度入学式を挙行しました。

本学では、国内外を問わず、また出身大学での専攻にとらわ れず、高い基礎学力をもった学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の研究分野に対する強い興味と意欲をもっ た者の入学を積極的に進めており、このたび、426名の新入生を本学に迎えました。

当日は、奈良県の前田努副知事、生駒市の山下真市長、 公益財団法人奈良先端科学技術大学院大学支援財団 小山博之専務理事、奈良先端科学技術大学院大学同窓会 駒井章治会長を来賓に迎え、また、本学入学式では恒例となった茂山家による狂言演能(大蔵流狂言『蝸牛(かぎゅう)』)を行い、奈良の伝統芸能で盛大に新 入生の門出を祝いました。

式典終了後には、小笠原直毅学長をはじめ本学役員と来賓の方々が、山中伸弥本学栄誉教授のノーベル生理学・医学賞受賞の功績を讃える銘板を見学するとともに、本学と自治体との相互支援などについて和やかに懇談を行いました。


【入学者数】
(博士前期課程)
情報科学研究科      127名(うち留学生 7名)
バイオサイエンス研究科  115名(うち留学生 4名)
物質創成科学研究科    106名(うち留学生 2名)
計  348名

(博士後期課程)
情報科学研究科      24名(うち留学生 12名)
バイオサイエンス研究科  25名(うち留学生 4名)
物質創成科学研究科    29名(うち留学生 6名)
計   72名

総計 426名(うち留学生 35名)


【小笠原学長式辞】

本日、奈良先端科学技術大学院大学の博士前期課程に入学された348名の皆さん、また、博士後期課程に入学・進学された78名の皆さん、本学200名の教員、150名の事務職員を代表して歓迎致します。また、新入生のご家族の方々にも、お祝いを申し上げます。

今 日の新入生の中には、世界15カ国からの35名の学生諸君が含まれています。母国を離れて、この日本で学ぶことを決意された皆さんを、心から歓迎したいと 思います。10日ほど前に、27名の留学生の方々に学位を授与しましたが、今日、35名の留学生の方を迎えたことにより、本学に在籍する留学生は、世界 39か国、地域からの146名となり、全学生数1,020名の14%となりました。今や、情報、人、物が国境を越えて流動化し、そうしたフラットな世界の 中でアジアやアフリカ諸国の経済発展が進んでいます。今まで我国の大学は、ともすれば視野が国内に限られていましたが、現在、世界の方々を受け入れ、日本 の科学技術と社会を知ってもらい、また、日本人学生も、世界における科学技術への要請と世界各国の社会を知ることができるように、大学のグローバル化を進 めることが求められています。日本人学生の方々は、本学のグローバルな教育研究環境を十分に活かして、世界的な視野を養っていただきたいと思います。ま た、留学生の皆さんは、日本人学生はもちろんの事、様々な国からの学生さんと、勉学の上でばかりでなく、日常的にも交流を進めていただきたいと思います。 大学としても、そうした交流の機会を積極的に提供していきます。

また、博士前期課程に入学された皆さんには、新しい可能性に挑戦して欲し いということを言いたいと思います。皆さんは、これまでの専門を活かし深化させていきたい、あるいは、新たな分野に挑戦したい、様々な希望のもとで、今ま での学修の場を離れて本学に入学されてきました。本学では、どの研究室に所属し、どのような専門分野で研究活動を進めるのか、色々な可能性が開かれていま す。私は、20年の間、本学の教授として微生物の研究に従事してきましたが、毎年、卒業実験で微生物の研究をしていたが、それを続けたいので先生の研究室 での研究内容を詳しく知りたいと、結構な数の新入生の方々がやってきました。その時には、卒業実験でのテーマが一番面白い分野と決めつけるのではなく、広 く動物や植物の研究もどうなっているかを知ってから所属研究室を考えることを勧めてきました。これから各研究科で、各研究室の研究内容の紹介が始まります が、どのような可能性が本学にあるのか、今までの知識や考えにとらわれることなく、広く見てください。今まで知らなかった、あるいは、気が付かなかった、 皆さんにとって興味深い研究分野があるかもしれません。昨年、本学の価値を端的に表し、親しみやすく印象に残るキャッチコピーの学内公募を行いました。そ の結果、選ばれた「無限の可能性、ここが最先端」という言葉に示されるように、本学では、そうした皆さんの将来への新たな挑戦が可能なのです。

ご 存知とは思いますが、奈良先端大は、新構想の独立大学院大学として、1991年10月に設立されました。本学の設立にあたって取りまとめられた新大学の構 想には、本学の研究と教育の使命について、以下のように書かれています。「先端科学技術分野は、広範な学際的広がりを持つこと、基礎研究における全く新た な展開が見られること、しかもその展開が極めて急速であること、基礎研究における新しい知見が、極めて短期間のうちに技術開発につながっており、また技術 の進歩が、これらの基礎研究の基盤としてその進展を可能にしているなど、いわゆる科学と技術との一体化が、他の分野以上に顕著であること、等の共通の特色 を持っている。したがって、これらの分野においては、従来の学問分野の枠を越えて、学際的な基礎研究の推進が極めて重要である。」教育に関しては、以下の ように書かれています。「先端科学技術分野の急速な進展に伴い、これらの分野の研究開発を担う研究者、技術者の組織的養成が、学術研究面でも産業経済面で も大きな課題となっている。特に、これらの分野においては、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度の基礎力を持つ 多様な人材を養成することが必要である。」すなわち、本学は、急速に発展している情報・バイオ・物質という先端科学技術分野において、工学・理学・農学・ 医学等の従来の学問分野の枠を越えた学際的な、そして科学と技術が一体化した研究活動を展開し、それを背景に、科学技術の進展に柔軟に対応し、常に新しい 分野を開拓し続けることのできる人材を育成するために設立されたのです。こうした本学の研究教育のミッションは、世界を視野に入れる、というキーワードが 付け加わっていますが、現在、強く社会から求められているものであり、先駆的なものでした。

そして、活発な研究活動を展開していた、多 様な背景を持つ気鋭の研究者が結集し、高度な研究活動とそれを背景にした組織的な大学院教育により、6,249名の修士課程修了者、1,225名の博士課 程修了者を送り出してきました。こうした本学の研究教育活動については、客観的な数値指標でも、また、文部科学省による国立大学の教育研究実績の評価にお いても、極めて高く評価されています。昨年、文部科学省は、大学の研究力強化・グローバル化を進めるため、研究大学強化促進事業として全国で22機関を選 抜しましたが、奈良先端大もその一つに選ばれています。

こうした本学の教育研究のミッションとの関係で、現在の科学技術は大きく変貌しつ つあります。21世紀の科学はあらゆる分野で複雑系と向き合うものになると指摘されています。情報科学分野の新しいキーワードは、ビッグデータです。コン ピューター、センサー、ネットワークの性能が高度化し、全世界がインターネットでリアルタイムに繋がれ、世界の様々なデータを一体的に活用することが可能 な時代になりました。その結果、ICT技術が支える新しい世界が作られることが期待されています。その対象は、エネルギー、交通、福祉、農業など、多様な ものが想定されています。また、ゲノムDNAの塩基配列解析技術の革新により、我々個人のゲノムを含め、様々な生物のゲノム配列を簡単に決められる時代に なり、自然界の生物の多様性の根源を研究できるようになりました。また、様々な細胞活動、生物活動について、膨大な情報を得ることが可能な時代になりまし た。その結果、バイオサイエンスは、個々のプロセスを理解する時代から、それらがどのように統合されて多様な生物が生きているのか、そして、地球環境上 で、様々な生物がどのように相互作用しているかを理解する時代になっています。ビッグデータバイオロジーという言葉に象徴されるように、膨大なデータの統 計学的解析が実験生物学を先導するようになるパラダイムシフトも起こりつつあります。物質の分野でも、分析・計測技術の高度化により、新しい物質世界の姿 が見えるようになり、20年前には考えられなかった新しい物質の創成が可能になっています。こうした科学技術の発展は、情報とバイオの融合領域である情報 生命科学の誕生に代表されるように、情報・バイオ・物質をまたぐような、新しい学際的科学技術分野を生みだしつつあります。また、基礎研究とその社会的な 展開の間の距離も、本学が創設された20年前よりずっと近くなっています。皆さんが本学を修了し、研究者、技術者などとして社会を担う10年、20年先に は、科学技術がどのように発展し、それが社会にどのようなインパクトを与えているか、現在の我々の想像を超える物になっていると私は思います。

ま た、アジア・アフリカ諸国等の経済的発展に見られるように、世界も大きく変貌してきており、その結果、地球の資源・エネルギーの制約、地球温暖化の問題と 人類の活動を両立させ、持続的な社会を作っていくための取り組みの重要性がますます鮮明になっていることも忘れてはなりません。例えば、最近発表された環 境省の報告書では、世界全体の温室効果ガスの排出量がこのまま増えると、日本の平均気温は今世紀末には3.5~6.4度上昇し、北海道を除くほとんどの地 域が亜熱帯化する可能性があるということが指摘されています。また、現在70億人の世界人口は、2050年には93億人に増え、水のニーズも55%増え、 世界の4割以上の人々が深刻な水不足に直面する恐れがあるという報告も国連から出されています。日本においては、そうしたグローバルな問題に加えて、世界 に類をみない、生産年齢人口が大きく減少する少子高齢化社会を目の前にして、我が国の活力を維持・向上させていくために、従来のビジネスモデルから脱却 し、グローバルな視点で革新的なイノベーションを創出することが必要となっています。そして、そのためには、新たな解決すべき問題を発見し、それへの創造 的な回答を導く、異分野の研究者・技術者間の連携が求められています。

画一的な豊かさ・便利さを追い求める社会から多様な豊かさを深める 持続可能な社会への転換とも言われていますが、モデルのない世界で自ら考え、グローバル社会を舞台に新たな科学技術の創出やその活用を行うことができる人 材が今求められています。皆さんには、将来、社会の第一線で、新しい科学技術の開拓・活用により、新しい世界を築いていくために、急速な科学技術の進展に 柔軟に対応し、常に新しい分野を開拓し続けることのできる高度な専門性と幅広い視野、さらに、異分野、異文化の人々とのコミュニケーション力、協働力を本 学で養っていただきたいと思います。そのためには、自分の専門分野に閉じこもることなく、常に様々な研究の動向に目を配り、それを創造的に活用する能力を 身に付けることが重要です。これから皆さんは色々な研究室に所属して、学修と研究活動を進めていくわけですが、他研究室や他研究科の考え方や手法を取り込 むことにより面白い展開が可能になるかもしれません。本学は、研究室・研究科の壁が低いことが大きな特徴です。皆さんも、様々な人との交流を是非進めてく ださい。

また、最近、科学技術者の社会的責任や倫理性が問われる事件が注目されています。研究活動は、研究活動に対する研究者の誠実さが 前提となっています。 そのために守らなければならないルール、すなわち、研究者・技術者・専門的職業人としての倫理性を身に付ける事も重要です。

最 後に、皆さんには、心身共に健康で楽しい学生生活を送って欲しいと思っています。本学で新たな生活を始めるにあたって、皆さんは新たに多くの人と知りあい になるはずです。そして、そうした出会いを意味あるものとして継続し、絆というネットワークに広げていくことは、皆さんの学修・研究活動の幅を広げるだけ でなく、皆さんの心の健康を支え、さらに、これからの人生を支える一生の財産になるはずです。

皆さんの意義ある学生生活とその未来に期待して、式辞とします。入学おめでとうございます。我々教職員は皆さんを心から歓迎します。

平成26年4月4日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 小笠原 直毅

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