〔プレスリリース〕喘息から身体を守る仕組みが明らかに ~肺胞マクロファージ分化に必須の酵素を発見~

研究成果 2017/05/29

 バイオサイエンス研究科の川﨑拓実助教、河合太郎教授らは、肺組織に存在する白血球の一種で感染防御などの役割がある食細胞の肺胞マクロファージについて、その細胞の分化と代謝を制御することが、喘息の抑制に重要な役割を果たしていることを初めて明らかにしました。

 マクロファージは、肺、脾臓、肝臓などの各組織に存在し、それぞれの組織で異なる機能をもっていることが知られています。肺に局在している肺胞マクロファージは、肺での感染防御やアレルゲンの除去、肺組織の恒常性維持といった機能を担っています。

 肺胞マクロファージは、肺に特徴的なマクロファージですが、その分化や生体内での制御は不明な点がありました。本研究では、イノシトールリン脂質代謝酵素(PIKfyve)をマクロファージで特異的に欠損したマウスを解析したところ、肺胞マクロファージが未分化な状態では、過剰な炎症を抑制することができず、ダニ由来成分により引き起こされる喘息症状が悪化することが明らかになりました。

 さらに、生体内の微量のリン脂質の一種、イノシトールリン脂質の代謝酵素であるPIKfyveが肺胞マクロファージの分化を制御していることもわかりました。また、肺胞マクロファージのイノシトールリン脂質代謝が慢性炎症の制御に重要な役割を果たすことを初めて示すことができました。こうしたことから、イノシトールリン脂質代謝を制御することで喘息などの慢性炎症を抑制できる可能性を見出しました。

 本成果は、平成29年5月22日に雑誌「The EMBO Journal」オンライン版に掲載されました。

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