〔プレスリリース〕DNAに傷が入った時に働く植物独自の遺伝子群を解明 ~病害菌の感染など環境のストレスに強い農作物の作出に期待~

研究成果 2018/02/16

 バイオサイエンス研究科の梅田正明教授、高橋直紀助教らの研究グループは、岐阜大学との共同研究により、植物体内でDNAが損傷すると、遺伝子の活性を調節するタンパク質が146個の遺伝子を制御して、細胞分裂を停止させたり、DNAを修復したりすることを明らかにしました。動物にも似た働きをもつタンパク質が存在し、細胞のガン化を抑制していますが、調節している遺伝子群は植物とはかなり異なることが示されました。また、植物に病原菌が感染すると、このタンパク質を活性化して様々な遺伝子を制御して、病原菌に対する抵抗性を持たせることを発見しました。本研究により、DNA損傷に対する植物独自の応答のしくみを明らかにするとともに、病原菌に対する植物の巧妙な防御戦略を裏付けました。

 植物のDNAに傷が入ると、植物にのみ存在するSOG1と呼ばれるタンパク質が活性化することで成長を停止し、様々な応答反応が引き起こされることが知られていました。しかし、このときに、SOG1がどのような遺伝子を制御しているかについては未解明でした。梅田教授、高橋助教らは、モデル植物のシロイヌナズナを用いてSOG1が制御する146個の遺伝子を同定し、それらが細胞分裂の制御、DNAの修復、病原菌に対する防御応答などさまざまな反応に関わっていることを突き止めました。

 本研究により、遺伝情報であるDNAが傷ついた時に、植物がどのようにDNAを修復し、自身の成長を最適に制御しているか、その詳細な仕組みが明らかとなりました。今後は、SOG1の機能を改変することで、紫外線によるDNA損傷や病原菌の感染などに耐える強い農作物の作出が期待されます。

 この研究成果は、平成30年2月11日付けでThe Plant Journal誌オンラインサイトに掲載されました。

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