〔プレスリリース〕バルク結晶と薄膜結晶で異なるスピン状態を直接観測 スピン状態の判別に有効な計測手法を確立

研究成果 2018/05/16

 先端科学技術研究科 物質創成科学領域 凝縮系物性学研究室の大門 寛教授、田口 宗孝特任助教らの研究グループは、大型放射光施設SPring-8の東大物性研ビームラインであるBL07LSUにおいて、東京大学と理化学研究所の研究グループの作製したペロブスカイト型ランタン・コバルト酸化物(LaCoO3)を用いて、共鳴軟X線非弾性散乱を測定しました。

 LaCoO3薄膜では、基板からの歪み効果によってバルク結晶とは異なるスピン状態の実現が示唆されていました。バルク結晶と薄膜結晶に対して非弾性散乱スペクトルを測定することで、コバルトイオンのスピン状態に応じてスペクトル形状が変化することを観測しました。

 奈良先端科学技術大学の研究グループによる理論計算によって得られたスペクトルと比較することで、バルク結晶と薄膜結晶では異なるスピン状態であることが明らかになりました。X線吸収測定ではバルク結晶と薄膜結晶でスピン状態の差は観測されませんでしたが、共鳴軟X線非弾性散乱を用いることで明確な差を観測することができました。

 本研究によってバルク結晶のスピン状態を解明するとともに、エピタキシャル成長した薄膜結晶ではバルク結晶とは異なるスピン状態が実現することを明らかにしました。

 この研究成果は、米国科学誌Physical Review Letters(オンライン)に平成30年5月16日付で掲載されました。

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