〔プレスリリース〕多様な植物に侵入するペプチドの探索 ~植物種に応じた膜透過性ペプチドの最適化が必要~

研究成果 2018/07/20

 理化学研究所(理研)環境資源科学研究センターバイオ高分子研究チームの堀井陽子テクニカルスタッフⅠ、及川和聡研究員、宮城雄特別研究員、沼田圭司チームリーダーと奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域 植物代謝制御研究室の出村拓教授、大谷美沙都助教の共同研究チームは、さまざまな植物細胞に侵入する細胞膜透過性ペプチド(CPP) [1]の探索を行い、植物種ごとに適したCPPの知見を得ることに成功しました。

 本研究成果は、核酸やタンパク質などを多種多様な植物の細胞内へ効果的に輸送できるペプチド設計を可能にし、植物形質転換体の簡便な作出や植物の病気診断マーカーの開発につながると期待できます。

 医療分野では、CPPを用いたドラッグデリバリーシステム[2]などの手法が広く検討されています。しかし、動物細胞とは異なり細胞壁などの特殊な構造を持つ植物細胞では、効率的に細胞に機能するCPPは乏しく、CPPを応用した植物細胞への物質輸送法は確立されていません。また、植物種、組織や生育段階に応じて細胞の性質が異なるために、さまざまな要素に適合したペプチドの設計が必要です。

 今回、共同研究チームは、既に生物物理学、生化学的な知見があり、動物細胞などに効率的に侵入することが知られている55種のCPPライブラリーを作製し、タバコ、シロイヌナズナ、トマト、ポプラ、イネなどさまざまな植物を材料として、導入効率と導入様式を評価しました。その結果、植物種や組織によって、CPPの細胞への導入効率や局在性は異なり、研究目的や材料に応じてペプチドを最適化することの重要性が明らかになりました。

 本研究は、英国のオンライン科学雑誌『Scientific reports』(7月20日付)に掲載されました。

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