研究成果 2019/02/05
受精卵からからだが正しく形作られるためには、生体内の現象が正確にコントロールされている必要があります。しかし、からだを構成する一つ一つの細胞は機械のように精密ではなく、いいかげんでノイズに満ちており、同じ条件でも常に全く同じように働く訳ではありません。そのような状況でどのように動物のからだは正確に作られるのでしょうか?この問題に取り組むため、京都大学大学院生命科学研究科 本田直樹 准教授および奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 松井貴輝 准教授の研究グループは、脊椎動物の体節形成に注目しました。体節とは発生過程で体軸に沿って繰り返し作られる構造で、将来できる背骨などの元となるものです。これまでの研究によって、体内時計(分節時計)のリズムに合わせて均一な体節が作られること、また時計が機能しないと体節の大きさが不均一になってしまうことが知られていました。しかしながら、時計の働きで体節が再現性よく作られるメカニズムは不明でした。本研究では数理モデルと実験を組み合わせることで、時計の刻むリズムがノイズをキャンセルする効果を持つことを示しました。そして、時計がオーケストラの指揮者のようにバラバラに振る舞う細胞たちを協調させることで、発生過程が正確にコントロールされていることが明らかとなりました。本研究成果は、体節形成の高い再現性を保証する仕組みの一端を初めて明らかにしたものですが、今後、ヒトの発生疾患(脊椎肋骨異常症など)の疾患の予防や治療につながることが期待されます。
本研究の理論的成果は、2019年2月5日に米国の国際学術誌「PLoS Computational Biology」にオンライン掲載されました。また、実験的成果に関しては、2018年3月12日に米国の国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。