平成30年度学位記授与式を挙行(2019/03/22)

イベント報告 2019/03/27

 3月22日(金)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う382名の修了者を送り出しました。

 授与式では、横矢学長より学位記が手渡され、式辞が述べられた後、中村茂一本学支援財団専務理事及び清川清本学同窓会会長から祝辞が述べられました。

 その後、同財団が優秀な学生を表彰するNAIST最優秀学生賞の表彰を行い、14名の受賞者に同財団から賞状及び賞金が贈られました。

 また、3月の学位記授与式では恒例となった学生・教職員等の有志による室内楽合奏が披露されました。

 式終了後には記念撮影・祝賀会も行われ、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長、理事をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合いました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】

 情報科学研究科     129名(うち短期修了2名、留学生6名)

 バイオサイエンス研究科 129名(うち留学生1名)

 物質創成科学研究科    94名(うち留学生1名)

 計           352名(うち短期修了2名、留学生8名)

【博士後期課程修了者】

 情報科学研究科     11名(うち短期修了2名、留学生6名)

 バイオサイエンス研究科  4名

 物質創成科学研究科   12名(うち留学生2名)

 先端科学技術研究科    2名(うち短期修了2名)

 計           29名(うち短期修了4名、留学生8名)

【論文提出による博士学位取得者】

 情報科学研究科 1名

総計 382名(うち短期修了6名、留学生16名)



【学長式辞】

 本日、修士の学位を授与された352名の皆さん、今年度設置された先端科学技術研究科の博士後期課程を短期修了された2名の方を含む、博士の学位を授与された30名の皆さん、おめでとうございます。また、この日を迎えられたご家族の皆さんにもお祝いを申し上げます。

 さらに、留学生をはじめとする多くの修了生の勉学・生活にご支援をいただいた、個人ならびに団体の皆様に、本学を代表して感謝の意を表したいと思います。

 今年度は、本学が学生の受け入れを開始し最初の修了生を出してから26年目を迎えますが、皆さんを含めて、これまでの奈良先端大の博士前期課程の修了者は7,979名となり、後期課程の修了者と論文提出による博士学位の取得者の総数は1,622名となりました。来年度には修了者10,000名も視野に入り、本学の修了生のネットワークが年々広がっています。

 こうしたネットワークは世界中に広がっています。今日、修士・博士の学位を授与された方々の中には、世界13カ国・地域からの16名の留学生の方がいらっしゃいますが、これで、本学で学位を取得された留学生の方々は、63カ国・地域からの611名となります。

 今日、前期課程を修了された皆さんの中には、後期課程に進学し研究者を目指してさらなる研鑽を積む方と、社会に出てプロの専門技術者あるいは研究者として新しい社会人生活を始める方がいらっしゃいます。また、後期課程を修了した方の多くは、プロの研究者としてのキャリアがスタートすることになります。皆さんは自身の将来をどのように描いておられるのでしょうか。

 現在、科学技術は大変革の時代を迎えており、ここ数年の科学技術のキーワードは、ハードウェアとソフトウェアの両面でのICT技術の進歩に支えられたInternet of Things (IoT)、人工知能(AI)、データサイエンスです。

 このようなICT技術の変革は、分野を問わず、研究の方法論を変えることになり、情報分野以外の科学技術分野への影響も顕著になってきました。例えば、バイオサイエンス分野では既にバイオインフォマティックス(Bio-Informatics)と呼ばれる研究領域が確立されており、物質科学の分野でもマテリアルズインフォマティックス(Materials Informatics)と呼ばれる研究領域が注目されるようになっています。

 すなわち、あらゆるものがインターネットにつながり、「サイバー世界」と「リアル世界」が融合した「超スマート社会」に向けて、リアルタイムで収集・蓄積され、ネットワークを介して世界中からアクセス可能な大規模データの解析に基づく、データ駆動型サイエンスあるいはAI駆動型サイエンスと呼ぶべき新しい研究パラダイムが生まれているのです。

 科学技術の大変革は社会にも大きな影響を与えます。2040年代には、今存在している職業の半分以上がなくなり、新しい職業が生まれているだろうと言われています。これは多くの人の職業が変わるということを意味しており、すでに一部の業種では、その兆しが現れてきています。

 2040年代というと、まさに、皆さんが社会の中核を担う時代です。

 これから皆さんに求められることは何でしょうか。科学技術に関わる研究者についてよく言われるのは以下の4つのキーワードです。

 1.知を基盤にして独創的な探究力により、新たな知の開拓に挑戦する「挑戦性」

 2.伝統的に体系化された学問分野の知識を前提としながらも、細分化された知を俯瞰し総合的な観点から捉える「総合性」

 3.異分野との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出す「融合性」

 4.世界の学術コミュニティーにおける研究の相対化により、世界に通用する卓越性を獲得し、世界に貢献する「国際性」

 この「挑戦性」「総合性」「融合性」「国際性」は、研究を職業とする人だけに当てはまることではないと思います。皆さんは、職種を問わず、理系・文系の枠を越えて広い視野を持つことによって社会の変化に柔軟に対応し、新しい分野を開拓し続けることのできる人材として、未来社会の創造と発展に主体的に取り組んでいくことによって、新しい時代を切り拓いていって頂きたいと思います。

 このためには、何事にも「一歩、前に踏み出す」という精神、すなわち、挑戦心と開拓心を持ち続けることが大事ではないでしょうか。

 昨年4月の情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科を統合した先端科学技術研究科の設置は、このような時代背景を踏まえたものです。

 皆さんは、本学でそれぞれの分野において専門知識を習得したわけですが、それ以上に、修士論文研究や博士学位論文研究を通して身につけた、課題を発見し、その解決法を考え、実践し、その結果を評価し、様々な人と議論し、論文にまとめるという経験が大事な財産です。

 苦しいこともあったであろう経験、そして、本学で築いた様々な人的ネットワーク、すなわち、人と人の絆(Kizuna)が、皆さんの将来を保証すると確信しています。

 奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、大きく変化して行く科学技術と社会の中で、皆さんが新しいことに積極的にチャレンジし、クリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築して行くことも重要な役割であると教職員は考えています。

 今年度は、昨年の11月11日の日曜日にオープンキャンパスに合わせて、ホームカミングデーを実施し、同窓会と連携して、修了生との懇親および意見交換の場を設けました。今後も、このようなイベントを継続して実施したいと思っていますので、その時には、是非、帰ってきてください。

 また、同窓会に加えて、インドネシアとタイに設置している海外サテライトオフィス等を通して世界で活躍する修了生の方々とのネットワークも強化したいと考えていますので、皆さんにもこのような活動に積極的に参加して頂きたいと思います。

 改めて、本日の学位取得をお祝いいたします。最後に、皆さんの今後の益々の活躍と一層の飛躍を期待していることをお伝えして、私からの言葉といたします。

平成31年3月22日
奈良先端科学技術大学院大学長 横矢直和

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