イベント報告 2020/10/12
10月2日(金)、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止対策を実施の上、本学ミレニアムホールにおいて令和2年度秋学期入学式を挙行しました。
本学では、国内外を問わず、また出身大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力を持った学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の研究分野に対する強い興味と意欲を持った者の入学を積極的に進めており、このたび、69名の新入生を本学に迎えました。
【入学者数】
(博士前期課程)
先端科学技術研究科 29名(うち留学生22名)
(博士後期課程)
先端科学技術研究科 40名(うち留学生29名)
◆総計 69名(うち外国人留学生51名)
【横矢学長式辞】
本日、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科の博士前期課程に入学された29名の皆さん、また、博士後期課程に入学あるいは進学された40名の皆さん、おめでとうございます。
皆さんの中には、世界11ヵ国・地域からの51名の留学生の方々がいらっしゃいます。母国を離れて、この古都・奈良の奈良先端大で学ぶことを決意された皆さんを、教職員一同、心から歓迎いたします。皆さんが入学されたことにより、本学に在籍する留学生は、世界31ヵ国・地域からの251名となりました。
これは全学生数1,136名の約22%であり、本学が標榜しているグローバルキャンパスの実現が近づいていることを実感します。
今、世界は新型コロナウイルスによる百年ぶりの大規模な感染症禍の渦中にあります。日本でも、今年の1月下旬に、新型コロナウイルス感染がこの地、奈良で初めて確認されてから徐々に全国に感染が拡大し、感染爆発が危惧される状況となり、本学では4月の入学式を中止せざるを得ない事態となりました。
4月上旬には一部地域に「緊急事態宣言」が発出され、4月中旬には対象地域が全都道府県に拡大されたことから、奈良県も1か月近くに亘って緊急事態宣言が続くこととなりました。このため、本学での活動も様々な制約を受けることになりました。この感染症禍は未だ収まってはいませんが、本日は、様々な感染防止策をとった上で参加者数を制限するなどして、入学式を挙行できる運びとなったことはうれしい限りです。ただ、残念なことに、皆さんの同期には未だに日本に入国できない25名の留学生がいらっしゃいます。
本学は、昨日、創立29周年を迎えましたが、2年半前に、教育プログラムの強化を目指して、従来の情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科を統合した先端科学技術研究科を設置するという組織改革を行いました。今日入学された皆さんは、その3期生として奈良先端大の新しい歴史を創っていくことになります。
先端科学技術研究科設置の背景として、まず、現在、科学技術はICTの進化等によって大変革の時代を迎えているということをお話ししておきたいと思います。科学技術の変革は産業や社会に大きな変化をもたらします。
産業面でのこの変革を表現した最も代表的な標語はドイツから提唱されたIndustry 4.0(第4次産業革命)です。
①蒸気機関の発明に端を発した移動手段・作業の機械化による19世紀の第1次産業革命、
②電力を活用した大量生産による20世紀初頭の第2次産業革命、
③コンピュータ技術がもたらす自動化による20世紀後半の第3次産業革命に続いて、
④インターネットとセンシング技術の融合がもたらす機械・システムの自律化による第4次産業革命の時代を迎えているというわけです。
また、我が国では、Industry 4.0に対応する形で、社会の形態について、①狩猟社会、②農耕社会、③工業社会、④情報社会の次に来る社会として、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した⑤超スマート社会としてのSociety 5.0が展望されています。
現在起こっている産業や社会の変化の特徴は、その変化が、かつて経験したことがないほど速いスピードで、世界規模で起こるということです。例えば、新しいビジネスモデルを掲げて登場したベンチャー企業が瞬く間に世界的な大企業になり、国家レベルの経済規模を有する巨大企業になっている現実を目のあたりにすると、このことを実感できると思います。
科学技術の変革は多くの場合、異分野の融合によって起こっていると言えます。本学は、「先端科学技術分野における研究を推進するとともに、優れた研究成果に基づく高度な教育により人材を育成し、もって科学技術の進歩と社会の発展に貢献する」ことを教育研究活動の基本的な目標として掲げていますが、教育研究の対象となる先端科学技術は本学設立時と現在では、研究の方法論を含めて大きく変わってきています。
情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科が設立された当初は、それぞれ独立した学術分野と考えられ、情報とバイオの融合領域としてのバイオインフォマティックスの萌芽は見られたものの、研究科の枠を越えた共同研究は少なかったと記憶しています。
それが現在では、ゲノム情報や生体分子の時空間分布が大量の情報として蓄積されるようになり、ビッグデータバイオロジーと呼ばれる情報科学とバイオサイエンスの新たな融合領域が生まれています。
また、物質科学の分野においても、マテリアルズインフォマティックスと呼ばれる情報科学との新しい融合領域の存在感が高まっています。
本学は、キャンパスと組織がコンパクトで、研究室間の壁が低いことが大きな特徴です。このような特徴を活かして、現在では、複数の領域・研究室にまたがった共同研究が活発に行われています。
このような現在の状況は本学創設時に想定されていなかったわけではなく、実は、本学の創設に先だって、平成3年(1991年)8月に取りまとめられた『奈良先端科学技術大学院大学の構想』において、学際的な基礎研究推進の重要性と、新しい分野を開拓し続ける人材育成の必要性が述べられていました。
先端科学技術研究科の設置は、本学創設の理念を時代に合った形で具現化するものです。先端科学技術研究科には7つの教育プログラムを設定しており、そのうち3つは従来の3研究科の教育プログラムに対応していますが、4つは今回の組織改革で新たに設定した融合領域の教育プログラムです。
皆さんはこれから、どの研究室に所属し、どの教育プログラムを履修するかを決めることになります。今までの経験や知識にとらわれることなく、新しい教育プログラムでの授業カリキュラム等を活用して、常に周辺分野の動向に目を配り、幅広い視野を養っていただきたいと思います。是非、『足を大きく前に一歩踏み出す』つもりで、本学で新しい可能性に挑戦して下さい。
皆さんの成長とともに大学も成長します。そのために、教職員は、皆さんが本学で新しいことに挑戦できるよう、努力を惜しまないつもりです。
皆さんのこれからの有意義な学生生活とそれを通した将来の大いなる飛躍を期待して、式辞といたします。
本日は、入学おめでとうございます。
令和2年10月2日
奈良先端科学技術大学院大学長
横矢直和