〔プレスリリース〕菜の花の自己と非自己を識別するしくみを解明 ~自家不和合性の自他識別機構を三次元構造から明らかに~

研究成果 2020/10/15

 奈良先端科学技術大学院大学の箱嶋敏雄理事・副学長、東京大学大学院農学生命科学研究科の村瀬浩司特任准教授・高山誠司教授らの研究グループは、アブラナ科植物の自家不和合性に関わるリガンド・受容体の複合体構造を決定し、コンピューターシミュレーション技術を用いて自家不和合性の自他識別機構(注3)を解明しました。

 植物の多くは自己の花粉を拒絶して、非自己の花粉で受粉する自家不和合性と呼ばれる性質をもっています。アブラナ科植物の自家不和合性においては多数の遺伝子型をもつ受容体SRKとリガンドSP11が、それぞれ同じ遺伝子型のパートナーのみを認識することにより、花粉拒絶反応を誘導することが知られていました。しかしながら、これらの分子がどのようにして自己と非自己を識別しているのかについての詳細は不明でした。

 本研究ではSRK-SP11複合体の3次元構造を、X線結晶構造解析(注4)の手法を用いて原子レベルの解像度で決定することに成功し、SRKがどのようにしてSP11を認識しているのかを明らかにしました。また、計11種類の遺伝子型について、SRKとSP11の相互作用をMDシミュレーション(注5)によって調べたところ、SRKは自己のSP11とのみ安定して相互作用できることがわかりました。

 これらの結果は、植物の自他識別のしくみをタンパク質構造レベルで初めて明らかにした成果であり、受精の人為的制御を介した優良品種の開発・生産に繋がりうる成果であることが期待されます。

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