イベント報告 2021/03/26
3月24日(火)、ミレニアムホールにおいて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う355名の修了者を送り出しました。
今回の授与式は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため時間・規模を縮小し、学生の出席者は令和3年3月修了生の代表者のみでの開催となりました。
授与式では、横矢学長から修了生代表者に学位記が手渡され、式辞が述べられた後、本学支援財団により優秀な学生を表彰するNAIST最優秀学生賞12名の受賞者に同財団理事長代理として本学垣内理事・副学長から賞状及び副賞が贈られました。
また、当日は、式典の模様をインターネットによりリアルタイムで配信したほか、式典終了後の会場を記念撮影のために開放することで、出席できなかった修了生や指導教員も喜びを分かち合いました。
※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。
【博士前期課程修了者】
先端科学技術研究科 307名(うち短期修了2名、留学生18名)
情報科学研究科 1名
バイオサイエンス研究科 1名
計 309名(うち短期修了2名、留学生18名)
【博士後期課程修了者】
先端科学技術研究科 35名(うち短期修了5名、留学生11名、
ダブルディグリープログラム修了1名)
情報科学研究科 4名(うち留学生2名)
バイオサイエンス研究科 3名(うち留学生2名)
計 42名(うち短期修了5名、留学生15名)
【論文提出による博士学位取得者】
情報科学研究科 4名(うち留学生2名)
◆総計 355名(うち短期修了7名、留学生35名、
ダブルディグリープログラム修了1名)
【学長式辞】
本日、平成30年度に設置された先端科学技術研究科の2期生を中心とする修士の学位を授与された309名の皆さん、先端科学技術研究科の1期生を中心とする博士の学位を授与された46名の皆さん、学位取得おめでとうございます。また、この日を迎えられたご家族の皆さんにもお祝いを申し上げます。
さらに、留学生をはじめとする多くの修了生の勉学・生活にご支援をいただいた、個人ならびに団体の皆様に、本学を代表して感謝の意を表します。
今年度は、本学が学生の受け入れを開始し最初の修了生を出してから28年目を迎えますが、本日学位を授与された皆さんを含めて、これまでの奈良先端大の博士前期課程修了者は8,671名、後期課程修了者と論文提出による博士学位取得者を合わせた人数は1,785名となり、大学創設以来の学位取得者の延べ人数は10,456名となりました。
本学の修了生ネットワークは世界中に広がっています。今日、修士・博士の学位を授与された方々の中には、世界12カ国・地域からの34名の留学生の方がいらっしゃいますが、これで、本学で学位を取得された留学生の方々は、68カ国・地域からの788名となります。
昨年の1月下旬に、日本で初めて新型コロナウイルス感染が確認されてから、感染地域が徐々に全国に拡大し、感染爆発が危惧される事態となりました。4月上旬には一部地域に「緊急事態宣言」が発出され、4月中旬には対象地域が全都道府県に拡大されたことから、奈良県も1か月近くに亘って緊急事態宣言が続くこととなりました。このため、本学での活動も様々な制約を受けることになりました。
この感染症禍はいまだ終息しておらず、感染拡大の第3波の到来に伴って、一部地域に「緊急事態宣言」が再発出される事態となりました。本日の学位記授与式も、感染防止策を徹底した上で、修了生の参加を少数の代表者のみに制限する形での開催となりました。
まさに百年ぶりの世界的な感染症禍です。このような状況の下で、修士論文研究および博士学位論文研究に取り組み、本日を迎えられた皆さんの努力に心から敬意を表します。
今日、前期課程を修了された皆さんの中には、後期課程に進学し研究者を目指してさらなる研鑽を積む方と、社会に出てプロの専門技術者あるいは研究者として新しい社会人生活を始める方がいらっしゃいます。また、後期課程を修了した方の多くは、プロの研究者としてのキャリアがスタートすることになります。皆さんは自身の将来をどのように描いておられるのでしょうか。
現在、科学技術は大変革の時代を迎えており、科学技術のキーワードは、ハードウェアとソフトウェアの両面でのICT技術の進歩に支えられたInternet of Things (IoT)、人工知能(AI)、データサイエンスです。
このようなICT技術の進展は、分野を問わず、研究の方法論を変えることになり、あらゆる科学技術分野への影響が顕著になってきました。本学の基盤となっている学術分野に限っても、例えば、バイオサイエンス分野では既にバイオインフォマティックス(Bio-Informatics)と呼ばれる研究領域が確立されており、物質科学の分野でもマテリアルズインフォマティックス(Materials Informatics)と呼ばれる研究領域の存在感が高まっています。もちろん、情報科学の分野からこれらの領域に新たな展開を図る人も出てきています。
様々な分野での科学技術の変革は社会にも大きな影響を与えます。2040年代には、今存在している職業の半分以上がなくなり、新しい職業が生まれており、産業の構造が大きく変わっているだろうと言われています。これは多くの人の職業が変わるということを意味しており、デジタルトランスフォーメーション(DX)の掛け声とともに、すでに一部の業種では、その兆しが現れてきています。
2040年代というと、まさに、皆さんが社会の中核を担う時代です。
これから皆さんに求められることは何でしょうか。科学技術に関わる研究者についてよく言われるのは以下の4つのキーワードです。
- 知を基盤にして独創的な探究力により、新たな知の開拓に挑戦する「挑戦性」
- 細分化された知を俯瞰し総合的な観点から捉える「総合性」
- 異分野との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出す「融合性」
- 世界の学術コミュニティーにおいて通用する卓越性を獲得し、世界に貢献する「国際性」
この「挑戦性」「総合性」「融合性」「国際性」は、研究を職業とする人だけに当てはまることではありません。皆さんは、職種を問わず、理系・文系の垣根を越えて広い視野を持つことによって社会の変化に柔軟に対応し、新しい分野を開拓し続けることのできる人材として、新しい時代を切り拓いていって頂きたいと思います。
そのためには、何事にも「一歩、前に踏み出す」という精神、すなわち、挑戦心と開拓心を持ち続けることが大事ではないでしょうか。
情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科を統合した先端科学技術研究科の設置は、このような時代背景を踏まえたものです。
皆さんは、本学で、融合領域を含む、それぞれの分野において専門知識を習得したわけですが、それ以上に、修士論文研究や博士学位論文研究を通して身につけた、課題を発見し、その解決法を考え、実践し、その結果を評価し、様々な人と議論し、論文にまとめるという経験が大きな財産です。
新型コロナウイルス禍による思いもよらなかった事態に遭遇したことも含めて、苦しいこともあったであろう経験、そして、本学で築いた様々な人的ネットワーク、すなわち、人と人の絆(Kizuna)が、皆さんの将来を保証すると確信しています。
奈良先端大の役割は、皆さんを社会に送り出したことで終わるのではなく、大きく変化して行く科学技術と社会の中で、皆さんが新しいことに積極的に挑戦し、クリエイティブな生活を送ることができるように、修了生の方々との持続的な関係を構築して行くことも重要な役割であると教職員は考えています。
毎年、秋のオープンキャンパスに合わせてホームカミングデーを実施し、同窓会と連携して、修了生との懇談および意見交換の場を設けています。今後も、このようなイベントを継続したいと考えていますので、その時には、是非、在学生の前にロールモデルとして帰ってきてください。ウイズコロナの時代に加えてポストコロナの時代においても、オンライン参加を併用した新しい形のホームカミングデーを開催できることを願っています。
また、修了生ネットワークの中核となる同窓会活動に加えて、海外に設置しているサテライトオフィスや海外のNAIST同窓会等を通して世界で活躍する修了生の方々とのネットワークも強化したいと考えています。皆さんもこのような活動に積極的に参加して頂きたいと思います。
先にも述べましたように、世界は未だ、新型コロナウイルスの出現による困難から脱出していません。これからも想定していなかった様々な困難が待ち受けているでしょうが、我々はそれらを乗り越えていく必要があります。「明けない夜はない」のです。そのためにも、常に「一歩、前に踏み出す」という心構えが求められます。
繰り返しになりますが、本日は学位取得おめでとうございます。最後に、皆さんの今後の益々の活躍と一層の飛躍を期待していることをお伝えして、私からの言葉といたします。
令和3年3月24日
奈良先端科学技術大学院大学長 横矢直和
【同窓会会長 祝辞】
奈良先端科学技術大学院大学を修了される皆さん、本日は大変おめでとうございます。ご両親、ご家族の皆様ならびに関係各位の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
これまでに、奈良先端大の修了生はのべ10,000名を数えます。多くの先輩方が国内外の大学、研究機関、大企業などで活躍しており、奈良先端大のブランドを不動のものにしています。皆さんが社会で活躍することで、その価値をさらに高めていってくださることを期待しています。
奈良先端科学技術大学院大学同窓会では、修了生や在学生を支援する様々な事業を展開しています。皆さんが社会に出た後に、本学で学んだことに誇りを感じたり、本学との繋がりを実感したりする機会が多々あることと思います。また、そうした有り難みは年を経るごとに強まっていくことでしょう。ぜひ本学同窓会に御入会いただき、その繋がりを最大限に活用していただければと思います。
私自身は、1998年に博士後期課程を修了した本学の2期生です。私が入学した当時は、まだ修了生もほとんどおらず、本学の知名度は現在とは比較にならないものでした。奈良先端大の魅力は知名度があることでもなく、歴史があることでもありません。世界で活躍する先生方と、熱い志をもった学生が結集して、新しいことにチャレンジする気概に溢れていることが、最大の魅力だと思います。そして、その思いは20年以上経った今、ますます強まっています。
皆さんは,修了までの1年以上、世界的なコロナ禍の影響を受けて、大変な状況の中で研究を進めて来られたことと思います。思うように実験が進まず不安になったり、友人たちと触れ合うことができず寂しい思いをされたりしたことでしょう。しかし、皆さん自身の努力と周囲の支援で、本日の修了を迎えられました。関係者の方々に感謝しつつ、ぜひこの貴重な経験を誇りに思い、将来への力に変えてください。
コロナ禍は図らずもこれまでに蓄積された社会の歪みや弱さをあぶりだしました。SDGsに沿った社会変革は待ったなしの状況ですが、これまでの常識が通用せず、誰にも正解が分からない時代です。しかし、一つだけ確実なことがあります。それは、決して受け身の姿勢ではいけないということです。一人ひとりが当事者意識を持ち、変化を恐れず、社会をより良くするために何ができるかを真剣に考え、提案し、実行することが重要です。
慣れ親しんだ大学や高専などを飛び出して、新しいことにチャレンジしようという思いで奈良先端大の門をくぐり、最先端の研究成果を生み出してきた皆さんは、まさに時代の要請にふさわしい資質と心構えを備えておられます。社会に巣立つ皆さんひとりひとりの活躍が、人類の未来を変えていきます。ぜひ、それぞれのお立場で奈良先端大で学んだことを発揮され、新しい時代を切り拓き、力強く引っ張っていってください。大活躍されることを祈念しています。
最後になりましたが、改めまして、本日は修了おめでとうございます。
令和3年3月24日
奈良先端科学技術大学院大学同窓会 会長 清川清