イベント報告 2021/07/02
6月25日(金)、学際融合領域研究棟2号館1階研修ホールにおいて学位記授与式を挙行しました。
授与式では、塩﨑一裕学長から出席した4名の修了生に学位記を手渡し、門出を祝して式辞が述べられました。
式終了後には、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、学長をはじめ指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合いました。
※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。
【博士後期課程修了者】
先端科学技術研究科 3名
【論文提出による博士学位取得者】
情報科学研究科 1名
計 4名
【学長式辞】
本日、博士の学位を授与された4名の皆さん、おめでとうございます。
コロナ禍の中、多くの困難があったと思いますが、学位論文研究を積み重ね、本日の博士号取得に至ったことは、まさに努力の賜物であり賞賛に値します。また、熱心にご指導を続けてこられた先生方にも心よりお祝いを申し上げます。
さて、昔から「博士号は足の裏の米粒」という日本ならではの表現があります。皆さんは、聞いたことがありますでしょうか?踏んでしまって足の裏についた米粒のように、大学院生にとって博士号は取らないと気持ちが悪いけれど、それを取ったからといって食えないという意味です。私自身、大学院生の頃にこの表現を聞いて、「なるほど」と思った記憶がありますが、博士号取得後、渡米してカリフォルニアにある研究所の研究員として働き始めてからは、博士号に対する私自身のイメージは大きく変わりました。
まず、アメリカに行くと、名前の前につく敬称がMr. ではなく、Dr. でした。博士号取得者は、高等教育を受けて専門的知見を持つ人材として、社会から一目置かれる存在であるということです。また、そもそも博士号なしでは、私がアメリカの研究所で研究員として雇用されることもありませんでした。つまり、博士号は世界で通用する免許証のようなもので、これを持っていて初めて運転できる車がある、すなわち博士号を前提とするキャリアに道が開かれるということです。是非、本日、手にした博士号に誇りを持っていただきたいと思います。
そして、もちろん社会も皆さんの活躍に期待しています。
現代経営学の発明者と言われるPeter Druckerは、1993年に発表した「ポスト資本主義社会」と題する著書の中で、数百年続いた資本主義社会の次に「知識社会」がやってくるという歴史の大転換が起こりつつあると述べています。資本主義社会から知識社会の移行期は、人類史上稀に見る激動の時代で、数十年間、おそらく2020年か2030年ぐらいまで続くと予言しました。2005年に亡くなったDruckerは、もちろん新型コロナウイルスのことを知るよしもありませんが、今、激動の時代を生きている我々は、彼の予言が当たっていたと思わざるを得ません。
来るべき知識社会では、知識が価値を持ち、知識労働が基本となるとDruckerは予測しています。そしてその基盤が、現在進行中のIT革命とグローバル化であると述べています。本学で学び、本日、博士号を取得した皆さんは、知識社会のリーダーとして活躍するための運転免許証をまずは手にしたと言えるのではないかと思います。
これからの知識社会をどのように設計していくのか。そのための課題や問題を見つけ、それらを解決するために何が必要か、どのようなアプローチが必要か。自らの専門分野だけに囚われることなく、広い視野をもって全体像を考え、課題や問題に挑戦していくこと、そして、自らに限界を設定することなく挑戦しつづける意欲も求められます。社会に出た後も本学の"Outgrow your limits" のスピリットを忘れることなく、それぞれがさらに高みを目指していただきたいと思います。
今年、本学は創立30周年を迎えますが、みなさんはこれまでに本学で博士号を取得した1,789名の中に名前を連ねることになり、修士号取得者を含めると1万人を超える本学修了者のコミュニティーの一員となります。さらに教職員も含めた奈良先端大コミュニティーとの繋がりは、本学で学んだ皆さんの財産の一つだと思います。この人的ネットワークを活性化する機会として、本学では毎年秋に修了生の皆さんを招いて「ホームカミングデー」を開催しています。今年はコロナ禍の影響でどのような形になるかわかりませんが、ホームカミングデーや本学同窓会を通して是非、奈良先端大との繋がりも今後のキャリアの中で活かしていって頂ければと思います。
私の式辞は以上となりますが、最後に、改めて博士号取得をお祝い申し上げます。
Dr. Shirakura、Dr. Suzuki、Dr. Wada、and Dr. Yuguchi.
2021年6月25日
奈良先端科学技術大学院大学 学長 塩﨑一裕