イベント報告 2021/12/23
12月22日(水)、新型コロナウイルス感染防止対策を実施の上、学際融合領域研究棟2号館1階研修ホールにおいて学位記授与式を挙行しました。
授与式では、塩﨑一裕学長から修了生に学位記が手渡され、門出を祝して式辞が述べられました。
また、当日は、式典の模様をインターネットによりリアルタイムで配信したほか、式典終了後の会場を記念撮影のために開放し、修了生たちは和やかな雰囲気のもと、指導教員等を交えて歓談し、喜びを分かち合いました。
※今回の学位授与者の内訳は、以下のとおりです。
【博士後期課程修了者】
物質創成科学研究科 1名(うち留学生1名)
先端科学技術研究科 7名(うち留学生4名)
総計 8名(うち留学生5名)
【学長式辞】
Congratulatory Remarks for Graduating Students (December 22, 2021)
Let me begin by offering my sincere congratulations to each of you, the participants here as well as those attending online.
This must be one of the most glorious days for you, and the commencement is also one of the most exciting days for me as university president.
Today, you have reached one of the milestones of your life. We all know that sailing through multiple, big waves of the pandemic has not been easy. I am sure that a number of people helped and stood by you in difficult times. Your professors, your family, and your friends. They must be delighted to celebrate your accomplishments today. I am sure you are happy to thank them upon this opportunity.
Since you arrived here at NAIST, you have been striving to achieve your thesis research over the years, and probably found that research is so long-term and so uncertain. Moreover, any research projects harbor pitfalls. I suppose you fell into some of them and worked hard to get out and continue. Looking back on your days as a graduate student, what do you find is essential to go through such a lengthy, bumpy trail toward the goal?
Passion? Patience? Tenacity?
I wonder if you have ever heard of the word "grit", G-R-I-T.
It is a personality trait difficult to define but well recognized thanks to a best-selling book by Angela Duckworth, Professor of Psychology at University of Pennsylvania.
She describes "grit" as a characteristic of people who maintain their interest in projects and do not give up despite obstacles, patiently finding ways to better their work. Successful researchers have it. Top leaders have it, too.
The fact that you have completed your thesis research indicates that you had some grit or you have developed it during your study here at NAIST. I believe scientific research is the best training to cultivate grit. Having been equipped with grit, you are now ready for bigger challenges.
Global challenges, such as the current pandemic, global warming, and SDGs, have to be addressed by the next generation of innovators and leaders. The world is waiting for our newest alumni. However, none of those challenges is as simple as your thesis research. Indeed, they are too intricate to be solved by individuals even with grit.
Many problems the world faces today can only be solved by teams. We have to tackle them with integrated efforts of diverse fields. Therefore, the ability to collaborate with others is going to be very important once you start the next stage of your career. You are expected to be aware of expertise different from your own. You need to know languages to communicate with experts in other fields.
Let me guess. You probably wrote your dissertation using sentences with the subject "I", such as "I did this", "I did that". But when you work in a team, you will be using "we" more often. Professor James Pennebaker at University of Texas at Austin wrote an interesting book titled "The Secret Life of Pronouns". He counted the frequency of words people use and found that their use of "I" versus "We" correlates with their social status. For example, college freshmen and company employees use "I" more often, while professors and company executives use more of "We".
After spending your time here at NAIST, I believe you are prepared to work in a team, speaking with the subject "We" rather than "I". That is because you have been on campus rich in diversity, communicating with others of different expertise, different cultural backgrounds, and different perspectives. I cannot wait to see how you will collaborate with others and what "your team" will achieve to create a better world.
And please remember - even after graduation, you are members of our NAIST community. We will always be here to celebrate your success, as a university is assessed by the success of its graduates. NAIST now has over 10,000 alumni and our Alumni Association serves as a platform for their global network. Please stay connected.
Once again, congratulations! And my best wishes for your future.
Go and outgrow your limits!
SHIOZAKI Kazuhiro, President, Nara Institute of Science and Technology
December 22, 2021
初めに、本日ここにご出席、あるいはオンラインで参加されている8名の修了生の皆さんひとりひとりに対して、心からの祝意を表します。
学位記を受ける本日は、皆さんの人生で最も輝かしい日の一つであります。そして、学位記授与式は、学長である私にとっても、最も心躍る日の一つです。
本日、皆さんは、人生の大きな節目を迎えました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが何度も大波となって押し寄せる中の航海は容易ではなかったはずです。この困難な日々の中で、皆さんを助け、寄り添ってくれた人たちがきっといたことでしょう。指導教員をはじめとする先生方、ご家族の皆様、そして友人たち。彼らは、皆さんが学位取得を成し遂げたことをとても喜んでいるに違いありません。そして、本日この場で、彼らに感謝できることは皆さんにとっても大きな幸せに違いありません。
皆さんはこのNAISTに入学して以来、学位論文の完成を目指し、何年にもわたって努力してきました。そして、研究というものが、長期にわたる、非常に不確実なものであることに気づいたのではないかと思います。その上、研究プロジェクトには常に落とし穴が潜んでいるものですから、転落しては懸命の努力でそこから抜け出して、自らの研究を前進させてきたのではないでしょうか。皆さんが大学院生としての日々を思い返した時、修了に至るこの長い波乱に満ちた道のりを経て、ゴールに到達するために不可欠なものは、一体何だったと思いますか?
情熱でしょうか。忍耐でしょうか。いや、それとも粘り強さでしょうか。
皆さんはGRIT(グリット)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
GRITは個人の性格的な特性を表す言葉であり、一言で定義することは難しいのですが、ペンシルバニア大学の心理学の教授であるAngela Duckworth氏のベストセラーにより、世に広く知られるようになりました。
彼女はGRITを「プロジェクトへの興味を持続し、困難にめげず、忍耐強く成功への道を探り続ける」人の特性であると述べています。成功した研究者はこのGRITを身につけています。世界のトップリーダーと言われるような人達もそうです。
学位論文研究を成し遂げた皆さんには、このGRITがある程度備わっていたか、あるいはNAISTで研究に取り組む過程でGRITを身につけたに違いありません。科学研究は、GRITを涵養する最高のトレーニングなのです。そして、GRITを身に付けた皆さんは、さらに大きな挑戦をするための準備ができたことにもなります。
現在のパンデミック、地球温暖化、そしてSDGsなど現在我々が直面している地球規模課題を解決するのは、次世代のイノベーターや、リーダーです。この世界は、奈良先端大の最も新しい同窓生である皆さんの活躍を待ち望んでいます。しかしながら、これらの課題はどれ一つとして、学位論文研究のようにシンプルなものではありません。たとえGRITを身につけていても、個人の力で解決するにはあまりにも複雑な課題です。
世界が現在直面している課題は、個人ではなく、チームの力によってのみ解決できるものばかりです。多様な分野が総力をあげて、課題の解決に取り組む必要があります。ですから卒業後の皆さんにとっては、他者と協力する能力が極めて重要なものとなってきます。そのためには、自分の専門とは異なる他の分野も知っておく必要がありますし、他分野の専門家とコミュニケーションできるだけの語彙を身に付ける必要もあります。
たぶん、皆さんは学位論文の文章を「私」を主語として書いたのではないでしょうか。「私はこれをした。」「私はあれをした。」というように。しかし今後、チームで課題に挑むようになれば、むしろ「我々」という主語を使うことが増えるでしょう。テキサス大学オースティン校のJames Pennebaker教授が書いた「代名詞の秘密」という興味深い本があります。彼は、人々が使う単語の頻度を調査した結果、「私」と「我々」のどちらをよく用いるかは、その人の社会的地位と相関があることを発見したのです。例えば、大学新入生や会社の一般社員は「私」を多く用いますが、教授や会社重役たちは「我々」を多く用いるとのことです。
NAISTで過ごした皆さんは、チームの一員として「私たち」という主語を使って話し、活躍ができるだけの準備ができているはずです。なぜなら皆さんは、NAISTの多様性に満ちたキャンパスで、異なる専門性、異なる文化的背景、異なる視点を持つ人たちとずっと交流してきたからです。皆さんがどのように他者と「共創」し、皆さんのチームがこの世界をどんな素晴らしいものに変えていくのか、その日がくることを待ちきれない思いです。
修了しても皆さんは「NAISTコミュニティー」の一員であることを忘れないでください。我々はいつもこの場所から、皆さんの成功を祝福するつもりです。大学とは、修了生のその後の成功により評価されるものなのです。NAISTは現在、1万人を超える修了者を輩出しており、同窓会は修了生による世界的なネットワークの場となっています。どうかこれからも「NAISTコミュニティー」の一員として、我々と共に歩みましょう。
最後にもう一度。修了おめでとうございます!
皆さんの輝かしい未来を心からお祈りします。
Go and outgrow your limits!
令和3年12月22日
奈良先端科学技術大学院大学長 塩﨑一裕
●実際の式辞は英語で行われました。
(日本語訳:NAIST教育支援課)