2009/04/07
奈良先端科学技術大学院大学(学長:磯貝彰)バイオサイエンス研究科の柴博史助教が、平成21年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「若手科学者賞」を受賞し、4月14日(火)の正午から、虎ノ門パストラル(東京都港区虎ノ門4の1の1)で表彰式が行われます。
な お、同賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究など、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた41歳未満の若手研究者に対して贈られる賞で す。今回の受賞対象となった研究テーマは、メンデルの法則で知られる「優劣性」の現象。アブラナ科植物は、自家受精を避けるための目印を作る遺伝子を両親 から受け継ぐが、なぜか片方の親の(優性側の)目印しか作られない場合があることが古くから知られてきた。今回、劣性側の目印を作る遺伝子の発現調節部位 を調べた結果、メチル化という化学修飾により、後天的に機能できない形に修飾されていることを発見し、「優劣性」という古典的な遺伝学の現象に、これまで 誰も予測しなかった全く新しい仕組みが関わっている例があることを世界に先駆けて提示した。今回の受賞は、この先駆的発見の功績が、高く評価されたもので す。
また、受賞については、文部科学省から、4月6日付けで発表されていますが、今回は、受賞者の研究内容などの詳細について下記のとおりお知らせします。
【研究テーマ】
植物の自家不和合性因子のエピジェネティック(後天的)な発現制御の研究
【受賞者】
柴 博史 (39歳)
現職 国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科 助教
【業 績】
両性花において自己花粉では受精できない現象を自家不和合性という。本機構はアブラナ科植物の場合、S遺伝子座にコードされる雌ずい因子と花粉因子によっ て支配される。花粉側における自家不和合性の表現型は、自身が持つ2つのS対立遺伝子間の優劣性によって決定されることが知られていたが、その機構は不明 であった。
本研究では、花粉因子の優劣性決定機構解明を通じて、対立遺伝子間の優劣性発現についてDNAメチル化という化学修飾により、劣性側 の花粉因子をコードする遺伝子が後天的に機能できない形に修飾されていることを明らかにするなど、優劣性という古典的遺伝学にエピジェネティクスが関与す る事を世界で初めて提唱し、新たな分野を開拓した。
本研究成果は、雑種強勢などを含め、これまであまり明解ではなかった優劣性現象の理解に寄与することが期待される。
【主要論文】
「The dominance of alleles controlling self-incompatibility in Brassica pollen is regulated at the RNA Level」Plant Cell vol.14、p491~504、2002年
「Dominance relationships between self-incompatibility alleles controlled by DNA methylation」Nature Genetics vol.38、p297~299、2006年